
覚えておきたい!3つのポイント
- 1
強オピオイドに分類される鎮痛薬であり、
麻酔導入時から術中、術後の様々な場面で使用される - 2
手術時鎮痛薬として使用するのが基本
効能または効果によって適切な投与量および投与方法を選択する - 3
呼吸抑制や無呼吸があらわれることがあるため、十分な呼吸管理が必要である

ご使用にあたっては各製品の電子添文をご確認ください。
※イラストはイメージです。
- ■警告
- 本剤の硬膜外およびくも膜下投与は、これらの投与法に習熟した医師のみにより、本剤の投与が適切と判断される患者についてのみ実施してください。
- ■禁忌
-
- 〈投与方法共通〉
- ・筋弛緩剤の使用が禁忌の患者
- ・本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
- ・頭部外傷、脳腫瘍等による昏睡状態のような呼吸抑制を起こしやすい患者
(フェンタニル投与により重篤な呼吸抑制が起こることがあります。) - ・痙攣発作の既往歴のある患者(麻酔導入中に痙攣が起こることがあります。)
- ・喘息患者(気管支収縮が起こることがあります。)
- ・ナルメフェン塩酸塩水和物を投与中または投与中止後1週間以内の患者
- 〈硬膜外投与およびくも膜下投与〉
- ・注射部位またはその周辺に炎症のある患者(硬膜外投与およびくも膜下投与により化膿性髄膜炎症状を起こすことがあります。)
- ・敗血症の患者(硬膜外投与およびくも膜下投与により敗血症性の髄膜炎を生じるおそれがあります。)
- 〈くも膜下投与〉
- ・中枢神経系疾患(髄膜炎、灰白脊髄炎、脊髄癆等)の患者
- ・脊髄・脊椎に結核、脊椎炎および転移性腫瘍等の活動性疾患のある患者
強力な鎮痛作用と、迅速な作用発現を併せ持つ薬剤
作用機序
フェンタニルはμオピオイド受容体作動薬です。
オピオイド受容体は末梢神経や脳脊髄の神経細胞体および神経終末に広く分布しており、フェンタニルはオピオイド受容体のうちμ受容体に作用します1)。
全身投与後では、フェンタニルはモルヒネの約100倍の力価(鎮痛効果)を持ちます2)。
効能・効果
- 全身麻酔、全身麻酔における鎮痛
- 局所麻酔における鎮痛の補助
- 激しい疼痛(術後疼痛、がん性疼痛など)に対する鎮痛

使用頻度の高い手術
使用方法
投与経路
- 全身麻酔、全身麻酔における鎮痛:静脈内投与
- 局所麻酔における鎮痛の補助:静脈内投与
- 激しい疼痛(術後疼痛、がん性疼痛など)に対する鎮痛:静脈内投与、硬膜外投与、くも膜下投与
用法・用量
全身麻酔、全身麻酔における鎮痛
※患者の年齢、全身状態に応じて適宜増減してください。
成人
バランス麻酔
- 麻酔導入
フェンタニル注射液として0.03〜0.16mL/kg(フェンタニルとして1.5〜8μg/kg)を緩徐に静注するか、またはブドウ糖液などに希釈して点滴静注してください。 - 麻酔維持
ブドウ糖液などで希釈してください。
- (1)間欠投与:フェンタニル注射液として0.5〜1mL(フェンタニルとして25〜50μg)ずつ静注してください。
- (2)持続投与:フェンタニル注射液として0.01〜0.1mL/kg/h(フェンタニルとして0.5〜5μg/kg/h)の速さで点滴静注してください。
大量フェンタニル麻酔
- 麻酔導入
フェンタニル注射液として0.4〜3mL/kg(フェンタニルとして20〜150μg/kg)を緩徐に静注するか、またはブドウ糖液などに希釈して点滴静注してください。 - 麻酔維持
必要に応じて、ブドウ糖液などに希釈して、フェンタニル注射液として0.4〜0.8mL/kg/h(フェンタニルとして20〜40μg/kg/h)の速さで点滴静注してください。
小児
バランス麻酔または大量フェンタニル麻酔に用いる場合
- 麻酔導入時
フェンタニル注射液として0.02〜0.1mL/kg(フェンタニルとして1〜5μg/kg)を緩徐に静注するか、またはブドウ糖液などに希釈して点滴静注してください。大量フェンタニル麻酔に用いる場合は、通常、フェンタニル注射液として2mL/kg(フェンタニルとして100μg/kg)まで投与できます。 - 麻酔維持
フェンタニル注射液として0.02〜0.1mL/kg(フェンタニルとして1〜5μg/kg)ずつ間欠的に静注するか、またはブドウ糖液などに希釈して点滴静注してください。
局所麻酔における鎮痛の補助
- ※患者の年齢、全身状態、疼痛の程度に応じて適宜増減してください。
成人
フェンタニル注射液として0.02〜0.06mL/kg(フェンタニルとして1〜3μg/kg)を静注してください。
激しい疼痛(術後疼痛、がん性疼痛など)に対する鎮痛
- ※患者の年齢、症状に応じて適宜増減してください。
- ※硬膜外投与やくも膜下投与の場合は局所麻酔剤などを併用してください。
成人
静脈内投与の場合
- 術後疼痛
フェンタニル注射液として0.02〜0.04mL/kg(フェンタニルとして1〜2μg/kg)を緩徐に静注後、フェンタニル注射液として0.02〜0.04mL/kg/h(フェンタニルとして1〜2μg/kg/h)の速さで点滴静注してください。 - がん性疼痛に対して点滴静注する場合
フェンタニル注射液として1日2〜6mL(フェンタニルとして0.1〜0.3mg)から開始し、患者の症状に応じて適宜増量してください。
硬膜外投与の場合
- 単回投与法
フェンタニル注射液として1回0.5〜2mL(フェンタニルとして1回25〜100μg)を硬膜外腔に注入してください。 - 持続注入法
フェンタニル注射液として0.5〜2mL/h(フェンタニルとして25〜100μg/h)の速さで硬膜外腔に持続注入してください。
くも膜下投与の場合
- 単回投与法
フェンタニル注射液として1回0.1〜0.5mL(フェンタニルとして1回5〜25μg)をくも膜下腔に注入してください。
投与の準備
薬剤調製時の注意
本剤が皮膚に触れた場合には、水で洗い流してください。
本剤の皮膚からの吸収が増加する可能性があるため、石けん、アルコールなどは使用しないようにお願いします。
薬剤投与時の注意
硬膜外投与
- 注射針またはカテーテル先端が、血管またはくも膜下腔に入っていないことを確かめてください。
- 試験的に注入(test dose)し、注射針またはカテーテルが適切に留置されていることを確認してください。
くも膜下投与
- 髄液の漏出を最小に防ぐために、脊髄くも膜下麻酔針は、できるだけ細いものを用いてください。脊髄くも膜下腔穿刺により脊髄麻酔後頭痛が、また、まれに一過性の外転神経麻痺等があらわれることがあり、このような症状があらわれた場合には輸液投与を行うなど適切な処置を行ってください。
- まれに脊髄神経障害があらわれることがあります。穿刺に際して患者が放散痛を訴えた場合、脳脊髄液が出にくい場合または血液混入を認めた場合には、本剤を注入しないでください。
薬物動態
- 半減期
健康男子5例にフェンタニル6.4μg/kgを静注投与した場合、半減期は平均約3.6時間でした4)。
ただし、持続投与する場合、投与時間の影響を受けます5)。
CSHTとは、持続投与終了後の血液中薬物濃度が 50%低下するまでの時間を指します。従来の半減期とは異なり、投与時間の影響を反映している値となります。
フェンタニルでは、投与時間が長くなるほどCSHTが上昇していることがわかります。一方、レミフェンタニルはCSHTは約3分と、投与時間にかかわらず一定です。

- 代謝
主にCYP3A4により肝臓で主要代謝物のノルフェンタニルに代謝されます6)。
- 排泄
尿・糞中に排泄されます4)。
- 特定の背景を有する患者
高齢者では一般的に生理機能が低下しているため減量するなどの注意が必要です。
フェンタニルを10µg/kg単回静注した場合、消失半減期(T1/2β)は50歳以下のグループでは平均265分(n=5)に対し、60歳以上のグループでは平均945分(n=4)に延長し、クリアランスは50歳以下のグループでは平均991mL/min(n=5)に対し、60歳以上のグループでは平均275mL/min(n=4)に低下したという海外の報告7)があります。
作用発現時間・作用持続時間
静脈内投与
作用発現時間:静脈内投与後鎮痛効果が最大になるまでの時間は5分以内2)
作用持続時間:30~45分8)
硬膜外投与9)
作用発現時間:5分
作用持続時間:2~4時間
脊髄くも膜下腔投与9)
作用発現時間:5分
作用持続時間:3~6時間
使用時の流れ:手術終了付近~手術終了~術後
術中はレミフェンタニルで鎮痛管理します。
閉創時に、状況を見てフェンタニルの投与量を決定し単回投与します。
抜管時には、呼吸回数にも注意しながら、推定されるフェンタニル効果部位濃度も参考に抜管を目指します。
硬膜外カテーテルを挿入している症例
手術開始前
- 70歳未満
0.75%ロピバカイン4mL+フェンタニル2mLを単回投与する。 - 70歳以上
0.75%ロピバカイン2mL+生理食塩液2mL+フェンタニル1mLを単回投与する。
閉創時(術後鎮痛のため)
- 70歳未満
0.75%ロピバカイン50mL+生理食塩液173mL+フェンタニル26mL+ドロレプタン1mL(4mL/h)で持続投与を開始する。 - 70歳以上
0.75%ロピバカイン35mL+生理食塩液200mL+フェンタニル13mL+ドロレプタン1mL(4mL/h)で持続投与を開始する。
硬膜外カテーテルの挿入ができない症例
術後鎮痛でフェンタニル持続静脈内投与を考慮する
- 70歳未満
フェンタニル0.5μg/kg/hrを生理食塩液に希釈して使用する。 - 70歳以上
フェンタニル0.3μg/kg/hrを生理食塩液に希釈して使用する。
制吐剤であるオンダンセトロンなどの5-HT3受容体拮抗薬は患者さんの術前診察で、乗り物酔いや前回の手術時の吐き気の状況を聞いて、必要な症例に使用しています。
フェンタニルの離脱症状を回避するための工夫やポイントはありますか?
オピオイド離脱症状としては、オピオイドの減量や中止の時に発生し、症状としては、頻脈、高血圧、頻呼吸、不穏、不眠、悪心嘔吐、下痢、発汗、振戦、発熱など多様です。高用量長時間の使用では発生リスクが高くなります。そのような症例では、段階的に持続投与量を減量したり、中止後も注意深く上記症状が発現しないか観察したりすることが必要です。
患者さん自身が痛みに応じて鎮痛薬を自己投与することで痛みを効果的にコントロールする方法であるPCA(Patient Controlled Analgesia:患者自己調節鎮痛法)で行われることがあります。
一般的には、PCAポンプが使用され、ボーラス投与や持続投与を設定できます。また、過量投与を防ぐため、ロックアウト時間(不応時間)の設定もできます。
静脈内投与にて行う方法をiv-PCA、硬膜外カテーテルが留置されていて硬膜外投与にて行う方法をPCEA(Patient Controlled Epidural Analgesia:自己調節硬膜外鎮痛法)と呼ばれます。
使用する上での重要な注意点
投与方法共通
- 本剤の使用に際しては、一般の全身麻酔剤と同様、必ず気道確保、呼吸管理等の蘇生設備の完備された場所で、厳重な管理の下に使用してください。特に全身麻酔時は麻酔医の管理の下に使用をお願いします。
- まれにショックあるいは中毒症状を起こすことがあるので、本剤の投与に際しては、十分な問診により患者の全身状態を把握し、異常が認められた場合には直ちに救急処置のとれるよう、常に準備をしておく必要があります。なお、事前の静脈路確保が望ましいです。
- バイタルサイン(血圧、心拍数、呼吸、意識レベル)および麻酔高に注意し、患者の全身状態の観察を十分に行い、必要に応じて適切な処置を行ってください。
- 麻酔の深度は手術、検査に必要な最低の深さにとどめてください。
- 本剤の影響が完全に消失するまでは、自動車の運転等危険を伴う機械の操作には従事させないよう患者にご説明をお願いします。
硬膜外投与およびくも膜下投与
- 重篤な呼吸抑制が投与から数時間以上経過した後に発現することがあるので、十分に注意してください。
過量投与
薬理作用が増強し、重篤な換気低下を示します。また、白質脳症が認められています。
その場合は以下のような治療を行ってください。
- 換気低下または無呼吸の場合には酸素吸入を行い、必要に応じて呼吸の補助またはコントロールを行ってください。必要に応じて麻薬拮抗剤(ナロキソン、レバロルファン等)の投与をお願いします。呼吸抑制は麻薬拮抗剤の作用より長く続くおそれがあるため、必要に応じて当該麻薬拮抗剤の追加投与をしてください。
- 筋強直による呼吸抑制の場合には筋弛緩剤の投与を行い、呼吸の補助またはコントロールをしてください。
- 患者を注意深く観察し、保温および適切な水分摂取を維持しましょう。
- 重度かつ持続的な低血圧が続く場合には、循環血液量減少の可能性を考慮し、循環血液量減少が見られた場合には、適切な輸液療法を行ってください。
副作用
重大な副作用
詳細やそのほかの副作用については各製品の電子添文をご確認ください。
- 麻酔導入時に、大量のフェンタニルを使用した際は、筋硬直による換気困難に陥る場合があります。その際には、速やかに筋弛緩薬(初回投与量であるロクロニウム 0.6~0.9mg)を投与し、慌てず換気ができるのを待ちます。
- よく見られる副作用としては、悪心・嘔吐が挙げられます。症状が発現すれば、投与速度を減速する、または投与を中止し、他の鎮痛剤に変更することが望ましいです。その際、吐き気止めとして使用するドロレプタンは、錐体外路症状をきたすことがあります。体が勝手に動いてしまう(ジストニア、ジスキネジア、アカシジア)ことがあります。そのような場合もすぐに持続硬膜外麻酔を中止します。
- 呼吸抑制は他のオピオイドも同様です。特徴として、換気量はそれほど減少しませんが、呼吸回数が著明に減少し10)、さらに血中CO2濃度の上昇に対する換気反応の亢進が抑制されます。
併用薬
併用禁忌
- ナルメフェン塩酸塩水和物
μオピオイド受容体拮抗作用により、フェンタニルの作用が競合的に阻害されることにより、フェンタニルの離脱症状があらわれる可能性や効果が減弱する可能性があります。手術等でフェンタニルを投与することが事前にわかる場合には、少なくとも1週間前にナルメフェン塩酸塩水和物の休薬が必要です。
併用注意
- 相加的に中枢神経抑制作用を増強する薬剤
中枢神経系抑制剤(フェノチアジン系薬剤、ベンゾジアゼピン系薬剤、バルビツール酸系薬剤等)、全身麻酔剤、モノアミン酸化酵素阻害剤、三環系抗うつ剤、骨格筋弛緩剤、鎮静抗ヒスタミン剤、アルコール、オピオイド剤 - 相加的にセロトニン作用が増強する薬剤
セロトニン作用薬(選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)、モノアミン酸化酵素阻害剤等) - 代謝が阻害されることにより呼吸抑制などの副作用が発現するおそれのある薬剤
CYP3A4阻害作用を有する薬剤(リトナビル、フルコナゾール、ボリコナゾール等) - 代謝が促進され、治療効果が減弱するおそれのある薬剤
CYP3A4誘導作用を有する薬剤(リファンピシン、カルバマゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン等)
併用注意には、全身麻酔薬や筋弛緩薬が含まれますが、手術時は併用されることが多いと思います。どのような点に注意し、管理されているのでしょうか?
術中および覚醒時には推定される効果部位濃度や患者状態を評価しながら投与を行います。全身麻酔薬や筋弛緩薬を大量に投与する場合には特に注意が必要です。
セロトニン作用薬との併用で、セロトニン症候群を引き起こすことがあります。フェンタニルを大量に投与している場合に起こりやすいようですので、そのような場合は注意が必要です。
拮抗薬
- ナロキソン
- レバロルファン
取り扱い・管理11)
麻薬のため、保管する場合は、施設内に設けた鍵にかけた堅固な設備内に保管する必要があり、他の医薬品(覚せい剤を除く)とは区別して保管してください。
「鍵をかけた堅固な設備」とは、麻薬専用の固定した金庫または容易に移動できない金庫(重量金庫)で施錠することができるものです。
受払い簿などを作成し、譲り受け、廃棄、譲り渡し、施用、麻薬事故届提出の場合に品名、数量、その年月日を記載する必要があります。
- <参考資料>
- 1) 橋本 敬太郎 他.監訳:グッドマン・ギルマン薬理書・第13版[上巻],廣川書店,2022,574.
- 2) 橋本 敬太郎 他.監訳:グッドマン・ギルマン薬理書・第13版[上巻],廣川書店,2022,599-600.
- 3) Robinson AP, et al.: Anesth Analg. 2001;92(2)10-4.(PMID:11159242)
- 4) McClain DA, et al.:Clin Pharmacol Ther.1980;28(1)106-14.(PMID:7389247)
- 5) Egan TD, et al.:Anesthesiology 1993;79(5):881-892.(PMID:7902032)
- 6) Labroo RB, et al.:Drug Metab Dispos.1997;25(9):1072-80.(PMID:9311623)
- 7) Bentley J B, et al.:Anesth Analg.1982;61(12):968-71.(PMID:7149300)
- 8) 岩月賢一、笹森載夫:麻酔.1967:16(11):933-945.
- 9) 高折修二 他.監訳:グッドマン・ギルマン薬理書・第12版[上巻],廣川書店,2013,648-51.
- 10) ロナルド D.ミラー:ミラー麻酔科学,2007:311-2.
- 11)「病院・診療所における麻薬管理マニュアル:平成23年4月」(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/dl/mayaku_kanri_01.pdfを編集して作成.
