
覚えておきたい!3つのポイント
- 1
2020年に承認された、短時間型ベンゾジアゼピン系の静脈麻酔薬
- 2
フルマゼニルにより拮抗できる
- 3
代謝にCYPが関与せず、肝臓のカルボキシルエステラーゼにより
速やかに分解される


ご使用にあたっては各製品の電子添文をご確認ください。
※イラストはイメージです。
- ■禁忌
-
- ・本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
- ・急性閉塞隅角緑内障の患者(抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状を悪化させることがあります。)
- ・重症筋無力症の患者(筋弛緩作用により症状を悪化させることがあります。)
- ・ショックの患者、昏睡の患者、バイタルサインの抑制がみられる急性アルコール中毒の患者(呼吸抑制、低血圧を増強させることがあります。)
投与時の血圧低下が軽度
作用機序
効能・効果

使用頻度の高い手術について
レミマゾラムは投与時の血圧低下が軽度である1)ことから、心血管系合併症を有する患者さんや循環動態が不安定な患者さんに用いられることもあります。

使用方法
投与経路
用法・用量
■導入
成人
レミマゾラムとして12mg/kg/時の速度で、患者の全身状態を観察しながら、意識消失が得られるまで静脈内へ持続注入してください。また、患者の年齢、状態に応じて投与速度の適宜減速をお願いします。
■維持
成人
レミマゾラムとして1mg/kg/時の速度で静脈内への持続注入を開始し、適切な麻酔深度が維持できるよう患者の全身状態を観察しながら、投与速度を適宜調節しますが、上限は2mg/kg/時です。また、患者の年齢、状態に応じて投与開始速度を適宜減速し、覚醒徴候が認められた場合は、最大0.2mg/kgを静脈内投与してもよいです。
※個人差があるので、患者の年齢、感受性、全身状態、併用薬などを考慮して、過度な麻酔を避けるために投与速度などを調節してください。
※鎮痛剤、筋弛緩剤などと適宜併用してください。臨床試験において、本剤単独投与での全身麻酔の使用経験はありません。
※維持投与中に覚醒徴候が認められた場合は、必要に応じて早送りなどによる急速投与を行うことができますが、投与速度は30mg/kg/時を超えないことが望まれます。臨床試験において、30mg/kg/時を超える投与速度の使用経験はありません。


肥満患者さんへの投与量はどう計算したらよいですか?
理想体重?それとも実体重?
プロポフォールと比較すると分布容積が非常に小さく、体重と全身クリアランスに明確な関連がないため理想体重が望ましい2)と考えます。一方、高いクリアランスにより過小投与となる可能性もあるため、脳波モニターを指標とした調整が推奨されます。
投与の準備
薬剤調製時の注意
- 溶解液には、生理食塩液を使用してください。
本剤は乳酸リンゲル液に完全には溶解せず沈殿するので、乳酸リンゲル液は溶解液に使用できません。 - 溶解後は24時間以内に使用してください。
- pH4以上の場合に本剤の溶解度が低くなるため、アルカリ性注射液での溶解は避けてください。
薬剤投与時の注意
- 持続注入する場合は、シリンジポンプなどの投与速度の調節が可能な注入器具を使用してください。
1バイアル50mg製剤を生理食塩液50mLで溶解し、1mg/mLとして用いることが一般的です。2mg/mLの製剤を酢酸リンゲル液の輸液ラインから投与すると、白色懸濁が生じることがあります。
薬物動態
- 代謝・排泄
肝臓のカルボキシルエステラーゼによって速やかに加水分解され、尿中に排泄されます3)。
CYPが関与しないため薬物相互作用が少ないといわれています。
作用発現時間・作用持続時間
12mg/kg/時で開始し、意識消失が得られるまで静脈内持続注入後に手術終了まで1mg/kg/時、調節注入した場合1)
・投与開始から意識消失までの平均時間:88.7秒
・投与終了から開眼までの平均時間:14.5分
・投与終了から抜管までの平均時間:19.2分
・投与終了から生年月日を言えるまでの平均時間:24.1分
・投与終了から手術室退室までの平均時間:27.9分
使用時の流れ
-
モニター類の装着(脳波モニター、筋弛緩モニターなど)
※脳波モニターは、BISモニターに限りません。 -
前酸素化
-
パルスオキシメータでSpO2、カプノメータでEtO2の適正値までの上昇を確認
-
オピオイド(鎮痛薬)などを投与
-
レミマゾラムを6〜12mg/kg/時3~5)で持続投与
呼名反応消失、脳波モニターを確認 -
初期投与量は患者背景を考慮し検討します。
-
意識消失を確認
-
レミマゾラムを1mg/kg/時へ漸減
-
ロクロニウム(筋弛緩薬)などを投与
-
脳波モニター、筋弛緩モニターを確認
-
気管挿管
-
麻酔の維持へ
-
脳波モニターを指標にレミマゾラム投与量を調整します。
※手術麻酔については、こちらで全体の流れをご覧いただけます。
使用する上での重要な注意点
- 投与中は、呼吸抑制、低血圧、徐脈などが発現する可能性があるので、気道確保、酸素投与などを行った上で、バイタルサインの変動に注意し、呼吸・循環に対する観察・対応を怠らないようお願いします。
- 麻酔深度が深すぎると、覚醒遅延を生じる可能性があるため、脳波モニターを用いて最適な麻酔深度となるよう投与量を調整してください。
- 術後は患者が完全に回復するまで管理下に置き、呼吸・循環の管理に注意してください。
- 必要に応じてベンゾジアゼピン受容体拮抗剤であるフルマゼニルを手もとに準備しておくことが望まれます。
- 麻酔の影響が完全に消失するまでは、自動車の運転など危険をともなう機械の操作に従事しないよう患者にご説明をお願いします。

副作用
重大な副作用
詳細やその他の副作用については各製品の電子添文をご確認ください。

併用薬
併用禁忌
併用注意
- 相互に作用が増強される可能性のある薬剤
中枢神経系薬剤:麻酔・鎮静剤(プロポフォール、デクスメデトミジン、ケタミン、セボフルラン等)、麻薬性鎮痛剤(レミフェンタニル等)、抗不安剤等(ヒドロキシジン等)
局所麻酔剤:リドカイン等
アルコール(飲酒)
拮抗薬
取り扱い・管理7)
第三種向精神薬です。鍵のかかる施設内での保管が必要です。
帳簿への記載義務はありませんが、譲受けについて記録し、定期的に在庫確認をすることが望ましいです。
廃棄については、許可や届け出は不要ですが、向精神薬の回収が困難な方法(焼却、酸・アルカリによる分解、希釈、他の薬剤との混合など)により行ってください。
1) M.Doi,et al.:Journal of Anesthesia.2020;34(4):543-53.(PMID:32417976)
2) Y.Shimamoto,et al.:PLoS One.2022;17(5).(PMID:35584094)
3) G J Kilpatrick,et al.:Anesthesiology.2007;107(1):60-6.(PMID:17585216)
4) M.Doi,et al.:Journal of Anesthesia.2020;34(4):491-501.(PMID:32303884)
5) T.K.Kim,et al.:Journal of Clinical Medicine.2023;12(16):5285.(PMID:3762327)
6) Q.Wu,et al.:Journal of Clinical Medicine.2023;12(23):7316.(PMID:38068368)
7) 「病院・診療所における向精神薬取り扱いの手引き:平成24年2月」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/dl/kouseishinyaku_01.pdfを編集して作成.