丸石製薬株式会社

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デスフルラン
貯法:室温保存

監修:日本医科大学大学院医学研究科 疼痛制御麻酔科学分野
教授 石川 真士 先生

覚えておきたい!3つのポイント

  • 1

    血液/ガス分配係数=0.424と作用発現・覚醒が速い

  • 2

    高齢者や肥満患者に適している

  • 3

    気道刺激性が強いため全身麻酔のマスク導入には向かない

更新日:2025年3月25日 監修医にいただいたコメントは作成時点(2025年3月1日時点)のものとなります。
ご使用にあたっては各製品の電子添文をご確認ください。
※イラストはイメージです。
■禁忌
  • ・本剤または他のハロゲン化麻酔剤に対する過敏症の既往歴のある患者
  • ・悪性高熱の既往歴または血族に悪性高熱の既往歴のある患者(悪性高熱があらわれやすいとの報告があります。)

麻酔の覚醒が速い薬剤

作用機序

肺胞より吸収されて血液へ移行し、作用部位である中枢で麻酔作用を発現します。ただし、その麻酔作用の発現機序は完全に解明されていません。

効能・効果

全身麻酔の維持
よく使われるシーン、
使用頻度の高い手術について1,2)

高齢者では覚醒遅延が懸念されるので、デスフルランの覚醒の速さを生かして、高齢者の長時間手術で使用しています。

使用方法

投与経路

吸入:麻酔器の気化器により、目的の濃度に気化させて投与します。
解説
麻酔器、気化器とは?

全身麻酔では、麻酔器の使用が必須です。麻酔器により、酸素や空気、吸入麻酔薬の投与、そして人工呼吸を行います。
酸素や空気の吸入ガスに、気化器を通して気体となった吸入麻酔薬が混合され、この混合ガスが呼吸回路を経て患者が呼吸することにより吸入投与されます。

デスフルランは他の吸入麻酔薬と異なり、加温装置を有する気化器が必要です。気化器は吸入麻酔薬ごとに専用となります。デスフルランの指示色は青色で、気化器にも青色のラインが入っていて目印になります。ちなみに、セボフルランの指示色は黄色です。

用法・用量

成人
デスフルランとして3.0%の濃度で開始し、適切な麻酔深度が得られるよう、患者の全身状態を観察しながら濃度を調節します。通常、亜酸化窒素の併用の有無にかかわらず、デスフルランとして7.6%以下の濃度で外科的手術に適切な麻酔深度が得られます。

肥満患者さんへの投与量はどう計算したらよいですか?
理想体重?それとも実体重?

セボフルランと同様に、投与量は体重換算では決めません。年齢から算出されるMAC(最小肺胞内濃度)を基準にして投与量を決めます。
十分な鎮痛ができている状況では0.7MACを目安にし、患者さんの状態に合わせて脳波モニターを参考に調整します。
肥満患者さんでは覚醒遅延が懸念されますが、デスフルランは肥満患者さんに対しても速やかな覚醒が得られます3,4)

※MACについては「薬物動態」の解説をご参照ください。

投与の準備

適切な濃度に気化させるためには電気的な加温が必要ですので、必ず正確な濃度の気体を供給できるデスフルラン専用気化器を使用してください。

薬物動態

  • 代謝・排泄
    デスフルランは、イソフルランのα炭素に結合した塩素をフッ素で置換した化学構造を有しており、ほとんど代謝を受けずに呼気中に排泄されます5)
    及び鏡像異性体
  • 血液/ガス分配係数とMAC
    抜管までに要した時間:9.8±5.0(分)6)
    ※麻酔導入を行い、N2O(50〜70%)もしくはO2(30%以上)併用下において、デスフルラン3%(気化器のダイヤル)より吸入を開始し、麻酔維持中は患者の状態に応じてデスフルランの吸入濃度を調整した場合(ガス流量:2~6L/分)

    血液/ガス分配係数
    ・亜酸化窒素:0.477)
    ・イソフルラン:1.438)
    ・セボフルラン:0.63~0.699)
    ・デスフルラン:0.42410)

解説
血液/ガス分配係数とは?

・37℃、1気圧における血液1mLに溶解するガスの量(mL)のこと

・吸入麻酔薬の導入・覚醒の速さの指標

・血液/ガス分配係数が小さいと麻酔の導入・覚醒が速く、大きいと麻酔の導入・覚醒が遅くなる

MAC(%)

・亜酸化窒素:1047)

・イソフルラン:1.15(O2併用下、平均年齢44.2±1.3歳)11)

・セボフルラン:1.17±0.07(O2併用下、平均年齢47.5歳)12)

・デスフルラン:6.0±0.29(O2併用下、平均年齢31〜65歳)13)

解説
MAC(minimum alveolar concentration:最小肺胞内濃度)とは?

・皮膚を切開した際、50%の人で体動が認められない吸入麻酔薬の肺胞内濃度のこと

・吸入麻酔薬の強さの指標

・MACが小さいほうが麻酔作用が強い

使用時の流れ

  • 患者の評価
  • 酸素投与(十分に酸素化をする)
  • 麻酔導入薬としてプロポフォールなどを投与する:オピオイド(鎮痛薬)なども併用
  • 麻酔深度モニターを使用して鎮静レベルを確認します。

  • 気管挿管
  • 十分な鎮痛をするとともに、0.7MACデスフルランによる維持

※手術麻酔については、こちらで全体の流れをご覧いただけます。

  • デスフルランの消費量は以下の式で求められます。
    20℃における1時間あたりの消費量(mL)= 2.9(デスフルランの係数)× 濃度(%)× ガス流量(L/分)

使用する上での重要な注意点

  • 本剤の使用に際しては、麻酔技術に熟練した医師が、専任で患者の全身状態を注意深く監視してください。
  • 本剤投与中は気道を確保し、血圧および心拍数の変動に注意して、呼吸・循環に対する観察・対応を怠らないようにしてください。
  • 麻酔の深度は手術、検査に必要な最低の深さにとどめてください。
  • 麻酔の影響が完全に消失するまでは、自動車の運転など危険をともなう機械の操作に従事しないよう患者にご説明をお願いします。
急激なデスフルラン投与濃度の上昇は、交感神経刺激作用により頻脈や血圧上昇が生じるので注意してください14,15)

副作用

重大な副作用

悪性高熱、高カリウム血症、重篤な不整脈、横紋筋融解症、ショック・アナフィラキシー、肝機能障害・黄疸、喉頭痙攣
詳細やその他の副作用については各製品の電子添文をご確認ください。
術後悪心・嘔吐のリスクを有する場合には、制吐剤であるオンダンセトロンやグラニセトロン投与など適切な予防策をとってください。

flowNote-text ※術後悪心・嘔吐について、麻酔を受けられる患者への説明動画はこちらからご覧いただけます。

解説
悪性高熱16)とは?

悪性高熱とは、稀ではありますが、全身麻酔にともなう致命的な副作用で、骨格筋におけるCaイオンチャネルの異常開放を原因とする代謝の異常亢進です。それにより、劇的な体温上昇、EtCO2(呼気終末二酸化炭素分圧)の上昇、頻脈、筋硬直など、さまざまな症状を引き起こし、致死的な症状へ発展する可能性があります。特異的な治療薬として、ダントロレンナトリウム水和物が知られています。

併用薬

併用禁忌

なし

併用注意

  • アドレナリン製剤(アドレナリン、ノルアドレナリン等)
    デスフルランが心筋のアドレナリンに対する感受性を亢進することが知られています。頻脈、不整脈、場合によっては心停止を起こすことがあります。
  • 中枢神経系抑制剤(ベンゾジアゼピン系薬剤、オピオイド鎮痛薬剤等)
    相加的に作用を増強させると考えられ、デスフルランの麻酔作用が増強し、血圧低下や心拍数減少などが起こる可能性があるため、併用する場合はデスフルランの減量を考慮してください。
  • 筋弛緩薬(スキサメトニウム、ロクロニウム等)
    デスフルランは筋弛緩剤の作用を増強するため、併用する場合は筋弛緩剤を減量してください。

拮抗薬

なし

取り扱い・管理

乾燥した二酸化炭素吸収剤を用いた場合に一酸化炭素を産生することがあり、海外においては一酸化炭素ヘモグロビン濃度が上昇したとの報告もありますので、二酸化炭素吸収剤の乾燥が疑われた場合は、投与前に二酸化炭素吸収剤を新しいものと交換してください。
劇薬として他の医薬品と区別して、貯蔵・陳列する必要があります。
なお、施錠の義務はありませんが、医療安全の観点から施錠されることもあります。
注意事項などの情報については電子添文をご参照ください。
<参考資料>

1) Juvin P,et al.:Anesth Analg.1997;85(3):347-51.(PMID:9296424)

2) X Chen,et al.:Anesth Analg.2001;93(6):1489-94.(PMID:11726429)

3) L La Colla,et al.:Br J Anaesth.2007;99(3):353-8.(PMID:17621601)

4) R E Mckay,et al.:Br J Anaesth.2010;104(2):175-82.(PMID:20037150)

5) Sutton TS,et al.:Anesth Analg.1991;73:180-5.(PMID:1854033)

6) バクスター株式会社:全身麻酔を要する成人手術患者を対象としたBLM-240の第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験(2011年4月22日承認、CTD2.7.6.18)

7) アネスタ 電子添文:2022年4月改訂(第1版)

8) 橋本 敬太郎 他監訳:グッドマン・ギルマン薬理書・第13版[上巻],廣川書店,2022,635.

9) セボフレン 電子添文:2023年6月改訂(第1版)

10) Eger II EI.:Anesth Analg.1987;66:971-3.(PMID:3631593)

11) W C Stevens,et al.:Anesthesiology.1975;42(2):197-200.(PMID:1115370)

12) T Katoh,et al.:Anethesiology.1987;66(3):301-3.(PMID:3826687)

13) I J Rampil,et al.:Anethesiology.1991;74(3):429-33.(PMDA:2001020)

14) T J Ebert,et al.:Anesthesiology.1993;79(3):444-53.(PMID:8363068)

15) R B Weiskopf,et al.:Anesthesiology.1994;81(6):1350-5.(PMID:7992902)

16) Henry R. et al.:Orphanet Journal of Rare Diseases.2015;10:93.(PMID:26238698)