感染症情報「ヘルパンギーナ」
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概要1)SUMMARY
ヘルパンギーナは、主にコクサッキーウイルスA群によって引き起こされる発熱と口腔粘膜にできる水疱性の発疹を特徴とした急性のウイルス性咽頭炎です。原因となるウイルスが複数あり何回も感染する可能性があります。乳幼児を中心に流行する、いわゆる「夏風邪」です。
感染症法上の5類感染症定点把握疾患に定められており、指定届出機関(全国約3,000カ所の小児科定点医療機関)より毎週報告がなされています。
また、学校保健安全法での取扱いについては、一律に出席停止の扱いにはなりません。したがって、欠席者の数、授業への影響、流行の大きさや合併症の発生状況などから、学校長が学校医と相談して第三種の感染症の「その他の感染症」として緊急的に措置をとることができます。
保育園での登園再開の目安は、「発熱や口腔内の水疱・潰瘍の影響がなく、普段の食事がとれること」です2)。
1. 微生物
2. 感染症
症状
潜伏期は2~4日です。日本では5月から増加し始めて7月にピークを迎えます。突然の38~40℃の発熱が1~3日間続き、全身倦怠感、食欲不振、咽頭痛、嘔吐、四肢痛などがある場合もあります4)。咽頭所見は、軽度に発赤し、口蓋から口蓋帆にかけて1~5mmの小水疱、これから生じた小潰瘍、その周辺に発赤を伴ったものが数個認められます4)。
治療等1)
特別な治療法はなく通常は対症療法のみです。時には脱水に対する治療が必要なこともあります。ヘルパンギーナは、無菌性髄膜炎や心筋炎を合併することがありますが、この場合入院治療が必要になります。心筋炎を合併した場合には特に循環器専門医による治療が望まれます。
3. 感染経路
接触感染と飛沫感染です。急性期にもっともウイルスが排泄され感染力が強いですが、回復後2~4週間の長期にわたり便からウイルスが検出されることがあります1)。また、エンテロウイルスの宿主はヒトだけです。
4. 消毒剤感受性
ハロゲン系消毒剤、アルデヒド系消毒剤は有効ですが、アルコール系消毒剤は条件によっては効果は不十分になります5)。
感染対策INFECTION CONTROL
感染防止対策
標準予防策に加えて接触予防策と飛沫予防策を行います。
ヘルパンギーナ施設内感染防止対策ポイント2)
手指 | アルコールでは効果が不十分なこともありますので、石けんと流水による手洗いを行います。 |
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おむつ交換 | おむつ交換の際には手袋をするなど、取扱いに注意します。おむつ交換後の手洗いを徹底します。 |
- ヘルパンギーナとは(2014年07月23日改訂)(国立感染症研究所) (https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/515-herpangina.html)を編集して作成
参考資料
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1) 国立感染症研究所:ヘルパンギーナとは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/515-herpangina.html -
2) こども家庭庁:保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/c60bb9fc/20230720_policies_hoiku_25.pdf -
3) CDC: Public Health Image Library (PHIL)
https://phil.cdc.gov/Details.aspx?pid=5630 -
4) 厚生労働省:感染症法に基づく医師及び獣医師の届出について 33ヘルパンギーナ
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-25.html - 5) 吉田眞一、他編:戸田新細菌学,改訂34版.南山堂,2013,616
2024年1月