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感染症情報
カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)感染症

概要

カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(Carbapenem-resistant Enterobacterales:CRE)感染症※1は、グラム陰性菌感染症の治療に重要なカルバペネム系抗菌薬に対して耐性を獲得した腸内細菌目細菌による感染症です。CREは、主に腸管内などの常在菌ですが、感染防御能の低下した患者にとって医療関連感染の原因菌として重要です。特に、カルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌(Carbapenemase-producing Enterobacterales:CPE)は、β-ラクタム系以外の抗菌薬に耐性を示す場合も多く注意を要します。
※1:2023年にカルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症の感染症法上の名称が、カルバペネム耐性腸内細菌目細菌感染症に変更された1)

1. 微生物

カルバペネム耐性腸内細菌科(CRE)細菌のイメージ図
(CDCホームページより2)
カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)は、グラム陰性菌感染症の治療に重要なイミペネム、メロペネムなどカルバペネム系抗菌薬に対して耐性を獲得した腸内細菌目細菌の総称です。腸内細菌目細菌は、ブドウ糖発酵性グラム陰性桿菌で、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、エルシニア科(Yersiniaceae)、モルガネラ科(Morganellaceae)など8科あります3)。菌種別届出割合によると、2017年以降はKlebsiella aerogenes, Enterobacter cloacae, Klebsiella pneumoniae(肺炎桿菌), Escherichia coli(大腸菌)の順に届出が多くなっています1)。耐性機序は、以下の2つに大別されます4)
A)何らかのβ-ラクタマーゼの産生量の増加と外膜蛋白(ポーリン)の変化
B)何らかのカルバペネマーゼ(カルバペネム分解酵素)を産生
カルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌(CPE)は、β-ラクタム系以外の抗菌薬に耐性を示す場合も多く注意を要します。なお、カルバペネマーゼ遺伝子はプラスミド上に存在しているため、接合という特殊な遺伝情報交換により同一菌種間だけでなく菌種を越えて伝播すると考えられています3)。 

2. 感染症

CRE感染症は、2014年9月より感染症法上の5類感染症全数把握対象疾患※2となりました。診断した医師は7日以内に届け出が必要です。なお、保菌者は届け出の対象外です。
※2:周囲へ感染が広がるのを防止することが必要な感染症や、発生数が少なく定点医療機関では正確な患者数が把握できない感染症

 

症状
    • Escherichia coli(大腸菌)

ヒト、動物の腸管内常在菌のひとつで、通常、病原性はありませんが、尿路感染5)、髄膜炎5)、肺炎5)、敗血症6)、手術部位感染7)などを引き起こす場合があります。また、腸管出血性大腸菌のE.coli O26、O111、O157などは、水溶性下痢などの消化管に病原性を示します。これらのなかで、特にO157によるアウトブレイクの事例が多くあります5,8)

    • Klebsiella pneumoniae  (肺炎桿菌)、Klebsiella aerogenes

ヒトや動物の口腔内または腸管内常在菌で、土壌、河川など自然界に広く分布します。院内では、手洗い場など湿潤環境から多く分離されます。肺炎などの呼吸器感染、尿路感染、肝・胆道系感染、敗血症、髄膜炎、腹膜炎などを引き起こします。なお、バイオフィルムを形成する場合があり、中心静脈カテーテルを挿入している場合は感染源になる可能性があります8,9)

    • Enterobacter cloacae

ヒトや動物の腸管内常在菌で、土壌、水などに存在します。院内では、シンク、排水口など湿潤環境からたびたび分離されます5)。感染防御能力の低下した患者に日和見感染を引き起こします。導尿カテーテル留置時の尿路感染、人工呼吸器装着時の呼吸器感染、高カロリー輸液などに伴う敗血症などが報告されています10)

    • Serratia marcescens

ヒトや動物の腸管内常在菌ですが、土壌、水などに存在します。院内、家庭ではシンク周囲など湿潤環境に生存しています。また、赤色の色素産生菌として知られています5)。高齢者や新生児、基礎疾患を有する患者に日和見感染が見られ、尿路感染、呼吸器感染、創感染、敗血症、髄膜炎、心内膜炎などを引き起こします。なお、低水準消毒剤に抵抗性を示したり、揮発などで濃度が低下したアルコール綿が汚染されたりした報告があります。
医療関連感染としては、手洗い用の石けん液、消毒用酒精綿、逆性石けんなどの消毒液が汚染源となり点滴やカテーテルから医療関連感染が発生した事例が報告されています8,11)

流行状況

CRE感染症の報告数は、2015-17年に比べ2018-19年は増加しましたが、2020-23年はやや減少して推移しています。CRE感染症の報告数は、2015-17年に比べ2018-19年は増加しましたが、2020-23年はやや減少して推移しています12)。都道府県別届出数では東京都, 神奈川県, 愛知県, 大阪府, 福岡県の上位5都府県で約40%を占めており、また届出全体の約80%が65歳以上の高齢者となっています1)

 

治療・ワクチン

CRE感染症の治療においてβ-ラクタム系抗菌薬を選択する際は、カルバペネム耐性を引き起こすβ-ラクタマーゼの種類によって治療選択肢が決定されます。CREはカルバペネマーゼを産生するCPEと、産生しないnon-CP-CRE(カルバペネム系抗菌薬に耐性を持つ腸内細菌科細菌のうち、カルバペネマーゼを産生しないもの)に大別されます。CPEはさらにAmbler分類に基づいてclass A、B、Dに細分化され、各クラスに対して有効な抗菌薬は異なります。一方、非β-ラクタム系抗菌薬を使用する場合は、カルバペネム耐性機序を考慮する必要がありませんが、これらの薬剤は主に経口薬への切り替えや外来治療で用いられ、特に薬剤耐性グラム陰性桿菌感染症における有効性のエビデンスは十分とは言えません13)
なお、現在、有効なワクチンはありません。

3. 感染経路

感染者や保菌者または汚染された環境からの直接接触または間接接触で広がります。
医療従事者の手指やポータブルX線装置などの汚染された共有の医療機器によって運ばれます14)。内視鏡関連として十二指腸内視鏡、泌尿器内視鏡によるアウトブレイクの報告があります。また、CREで汚染された物品をシンクで洗浄することで、シンクが環境の汚染源となった報告が多くあり、いったんシンクから検出されると長期にわたって生存する可能性があります15,16)

4. 消毒剤感受性

肺炎桿菌などの Klebsiella属、大腸菌(腸管出血性大腸菌)は全ての消毒剤、アルコール製剤が有効です。 Serratia marcescensは、低水準消毒剤(クロルヘキシジングルコン酸塩、ベンザルコニウム塩化物)に対して抵抗性を示すことがあります8)
Enterobacter cloacaeは、低水準消毒剤などの消毒剤が有効です17)

感染対策

感染防止対策

CRE、CPEが検出された場合に適切な対策がとれる体制を整えておきます。CREが検出された場合は通常の接触予防策、CPEが検出された場合は、患者のケア・診療を行う医療従事者の限定を考慮し、厳重な接触予防策を行います。また、同室患者などの保菌調査、施設内での情報共有なども行います。CPEが検出された場合の対策のポイントを表に示します。

CPEが検出された場合の対策のポイント 14,15,16,18,19)

病室 ・ 保菌者・感染者は個室管理、個室に収容が難しい場合は、同じ感染症患者で集団隔離(コホート隔離)を行う
厳重な手指衛生 高い遵守率が求められる
・ 患者に接触する前、無菌的な作業(静脈内留置器具の装着など)を行う前、侵襲的な医療器具を取り扱う前、および同じ患者の汚染部位での作業から清潔な部位での作業に移る前には、直ちに手指衛生を行う
・ 患者または患者の周辺環境に接触した後、血液、体液、または汚染された表面に接触した後、および手袋を外した直後には、手指衛生を行う
個人防護具(PPE)の着用 着脱は正しい手順で行い、着脱時に自己汚染しないように注意する
・ 手袋
病室に入る時、手指衛生後手袋を着用し、出る時は手袋を外し、手指衛生を行う
・ ガウン
着衣が患者に直接接触する場合、病室環境に接触する場合はガウンを着用し、病室から出る時はガウンを脱いで、手指衛生を行う
聴診器、血圧計などの器具 できるだけ患者専用とし、使用後はアルコールなどで消毒する
環境衛生管理 ・高頻度接触面(ベッド柵、床頭台、オーバーテーブル、ドアノブなど)

1日1回以上環境消毒薬を用いて清拭する

・シンク

患者用手洗いシンクと汚染器具洗浄用シンクを分離する

・汚染した水回り

腸内細菌目細菌は、消毒剤などで除菌成功例は少なく、最終手段として器具の取り替えを考慮する

参考資料

 

2025年10月作成