丸石製薬株式会社

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医療関係者向情報サイト 医療ナレッジ 消毒の”きほん” 患者環境

環境整備の基本は清掃とされており、「環境殺菌の目的で消毒薬の噴霧、散布、燻蒸および紫外線照射などは行わない1)」とされています。

血液・体液による汚染局所に対しては、汚染を除去してから消毒を行います。その他、接触感染予防のため、ドアノブ等のよく手の触れる環境表面(高頻度接触面)や緑膿菌等の定着防止のため、湿潤環境(流し台、洗面台等)は感染リスクに応じて消毒を行います。

ここでは、患者環境に対して一般的に用いられる代表的な消毒方法を以下にご紹介します。消毒を実施する場合には、ご使用される薬剤の添付文書等をご確認の上、行っていただきますようお願いいたします。

広範囲の環境(床など)FLOORS

微生物は環境中のほこりと水分によって生存していますので、環境整備において重要なことは環境からほこりと水分を取り除くことですが、「一般的な患者ケア環境に対して消毒剤を使う必要はない1)」とされており、「大切なことは日常的にほこりや汚れや水分を取り除いておくこと1)」とされています。一方で、CDCが2003年に公表した「CDC Guidelines for Environmental Infection Control in Health-Care Facilities 2003(保健医療現場における環境感染制御のためのガイドライン);以下CDCガイドライン2003」は、「患者区域では表面汚染の性質が不確実な場合や多剤耐性菌の存在について不確実な場合は、病院用洗剤/消毒剤を用いること2)」とされています。なお、室内全域の清浄化を目的とした消毒剤の噴霧2)や燻蒸3)は否定されています。

高頻度接触面(よく手の触れる部分)HIGH FREQUENCY CONTACT SURFACE

接触により伝播する病原微生物(ノロウイルス、MRSA、緑膿菌、セパシア、セラチアなど)の感染防止には、高頻度接触面(ドアノブ、ベッド柵、テーブル、スイッチ類、診察台、病室内のトイレの中及び周囲の表面などのよく手の触れる部分)の消毒が必要とされています。CDCガイドライン2003では、「高頻度接触面は余り触れない部分より頻繁に清掃し、消毒すること2)」とされています。

高頻度接触面の消毒には消毒用エタノール等のアルコール製剤による清拭が適しています。材質が傷む等によりアルコールが使用できない場合は低水準消毒剤を使用します。ただし、消毒効果はアルコールより低く、微生物によっては十分な消毒効果が得られない場合があります。

床が血液・体液・吐物等の有機物で汚染された場合は汚染物を取り除いた後、0.05~0.5w/v%(500~5,000ppm)次亜塩素酸ナトリウムで清拭消毒(血液などの汚染に対しては0.5%(5,000ppm)、また明らかな血液汚染がない場合には0.05%(500 ppm))する4)ことが勧められています。

カーテンCURTAINS

CDCガイドライン2003では、「ほこりがたまっていたり目に見える汚れのある場合には清掃すること2)」としていますが、病院感染対策ガイドラインでは「病室入り口やベッド間のカーテンは高頻度に手が触れるため、定期的に洗濯する1)」としています。高頻度接触面かどうかに応じて対応が必要です。

湿潤環境HUMID ENVIRONMENT

流し台・洗面台はグラム陰性桿菌(緑膿菌、セラチア等)や真菌が定着しやすいため、清掃し乾燥させておくことが大切です。また、定期的にグラム陰性桿菌や真菌に有効なアルコール製剤や0.02~0.05%次亜塩素酸ナトリウムで清拭消毒することも勧められます。

浴槽やその周囲の消毒は低水準消毒剤を用います。「浴槽や沐浴槽などの消毒ではこれらの消毒薬の原液(10%)をガーゼやスポンジなどにたらして、それでゴシゴシこすっても差し支えない5)」とされているものもあります。拭布やスポンジは汚染を受けやすく特に管理が必要となります。可能であれば、単回使用とし、再利用する場合には、熱湯での消毒や0.02~0.05%次亜塩素酸ナトリウムなど効果の高い消毒を行い、その後十分に乾燥させるようにします。

参考資料

  • 1) 国公立大学附属病院感染対策協議会編集. 第6章 その他 Ⅲ環境表面・給湯・空調等の整備, 病院感染対策ガイドライン 2018年版. 株式会社じほう, 2018: 232-245
  • 2) CDC: CDC Guidelines for Environmental Infection Control in Health-Care Facilities 2003新しいタブでページが開きます https://www.cdc.gov/infectioncontrol/pdf/guidelines/environmental-guidelines-P.pdf
  • 3) 尾家重治. 第1章 消毒薬の基本を知る消毒薬の選び方・使い方. 株式会社じほう, 2014: 2-15
  • 4) 厚生労働省健康局結核感染症課長. 感染症法に基づく消毒・滅菌の手引きについて(健感発1227第1号 平成30年12月27日)新しいタブでページが開きます https://www.mhlw.go.jp/content/000548441.pdf
  • 5) 尾家重治. 第5章 こんな時はどの消毒薬を使う? 消毒薬の選び方・使い方. 株式会社じほう, 2014: 134-141