消毒NAVI「口腔」
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現場でお困りの消毒方法について、尾家 重治先生（山陽小野田市立 山口東京理科大学 薬学部 教授）に解説していただきました。
なお、器具・物品や消毒剤等の取り扱いにつきましては、各製品の取扱説明書等をご確認ください。
口腔の消毒方法
（1）うがい（洗口）
7%ポビドンヨードガーグル（15～30倍希釈で使用）、3％オキシドール（10倍希釈で使用）、0.004％ベンゼトニウム塩化物などが用いられる（表1）。これらのうち、3％オキシドール（10倍希釈で使用）では、消毒というよりもむしろ発生する酸素（O2）の発泡による異物除去効果が期待できる（図1）1)。
いずれの薬剤も、長期にわたる使用は勧められない。なぜなら、オキシドールを口内炎や歯肉炎でのうがいに用いて舌や口腔粘膜に潰瘍を生じたとの報告2)や、ポビドンヨードガーグルの長期間にわたる使用で血中ヨウ素濃度の上昇や歯牙の着色が生じたとの報告3)などがあるからである。口腔内の清潔保持は、消毒薬で行うよりむしろ機械的洗浄で行うのが望ましい4-7)。
| 消毒薬 | 備考 |
|---|---|
| 7%ポビドンヨードガーグル（15～30倍希釈で使用） | ・長期間にわたる連用は望ましくない |
| 3%オキシドール（10倍希釈） | |
| 0.004％ベンゼトニウム塩化物 |
(2)創傷部位
口腔粘膜の創傷部位には、10%ポビドンヨード、7%ポビドンヨードガーグル(15～30倍希釈)、3%オキシドール（原液または2倍希釈）、0.01～0.02％ベンゼトニウム塩化物などが用いられる8)。これらのうち、ポビドンヨードはウイルス、酵母様真菌（カンジダなど）および細菌などに対して幅広い抗微生物スペクトルを有するものの、遊離ヨウ素濃度が低いため必ずしも十分な消毒効果を示す訳ではない。たとえば、献眼の消毒で、20倍希釈ポビドンヨードへの2分間接触により微生物汚染量が半分程度になる報告がある9)。
引用文献
- 1) Alves PJ, et al: Role of antiseptics in the prevention and treatment of infections in nursing homes. J Hosp Infect, 131: 58-69, 2023.
- 2) Rees TD, Orth CF : Oral ulcerations with use of hydrogen peroxide, J Periodontol, 57: 689-692,1986.
- 3) Ferguson MM, et al: The effect of a povidone-iodine mouthwash upon thyroid function and plaque accumulation, Br Dent J, 144:14-16, 1978.
- 4) Ishikawa A, et al: Professional oral health care reduces the number of oropharyngeal bacteria. J Dent Res, 87: 594-598, 2008.
- 5) Pitten F-A, et al: Do cancer patients with chemotherapy-induced leukopenia benefit from an antiseptic chlorhexidine-based oral rinse? A double-blind, block-randomized, controlled study. J Hosp Infect, 53: 283-291, 2003.
- 6) Binkley C, et al: Survey of oral care practices in US intensive care units. Am J Infect Control, 32: 161-169, 2004.
- 7) Okuda M, et al: Reduction of potential respiratory pathogens by oral hygienic treatment in patients undergoing endotracheal anesthesia. J Anesth, 17: 84-91, 2003.
- 8) Hoang T, et al: Povidone-iodine as a periodontal pocket disinfectant. J Periodontal Res, 38: 311-317, 2003.
- 9) Sousa SJFE, Sousa SBFE: Eye bank procedures: donor selection criteria. Arq Bras Oftalmol, 81: 73-79, 2018.