丸石製薬株式会社

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医療関係者向情報サイト 医療ナレッジ 消毒NAVI ネブライザー

現場でお困りの消毒方法について、尾家 重治先生(山陽小野田市立 山口東京理科大学 薬学部 教授)に解説していただきました。
なお、器具・物品や消毒剤等の取り扱いにつきましては、各製品の取扱説明書等をご確認ください。

ネブライザーの原理

ネブライザー(吸入器)は、吸入薬を霧状にし、直接気管支に届けるための器具です。吸入薬は経口薬よりも少ない量で大きな効果があり、pMDI(加圧噴霧式定量吸入器)を上手に使えない乳幼児でもより確実に吸入できます。

ネブライザーには超音波式やジェット式などがあります。ネブライザーはエアロゾル(小さい水滴)を発生するので、微生物汚染を受けるとエアロゾルとともに微生物を噴出し、感染の原因となりえます(図1)。したがって、ネブライザーには消毒が必要です1,2)

図1. エアロゾル(小さい水滴)を発生する。
したがって、水が細菌汚染を受けると、細菌を含有したエアロゾルを噴出する。

超音波ネブライザーの消毒方法

超音波ネブライザーは、クロルヘキシジンやベンザルコニウム塩化物が無効なBurkholderia cepacia (セパシア菌)による汚染を受けやすいことが判明しています。したがって、超音波ネブライザーの蛇管や薬液カップなどの消毒には、セパシア菌にも有効でかつ低残留性の消毒薬である次亜塩素酸ナトリウムが適しています3)。洗浄後に0.02% (200ppm)液への1時間浸漬を行います。個人使用では24時間ごと、共用ではそのつどの消毒が必要です4,5)。その後に食器乾燥器などで乾燥させておきます。

なお、共用の超音波ネブライザーでそのつどの消毒ができない場合には、逆流防止弁付きマウスピースや逆流防止管付きの鼻管などを患者ごとに交換する方法で対応します。ただし、患者がせき込んだ場合などは、そのつどの消毒が必要になります。また、薬液カップは破損しやすいので6)、定期的(6か月や1年ごとなど)に交換を行ってください。

図2. 超音波ネブライザー

24時間ごとに消毒!

図3に、保存剤非含有の吸入液中でのSerratia marcescens(セラチア菌)の動態を示しましたが、48時間後には高濃度汚染になっています。セラチア菌などのグラム陰性桿菌は、一見栄養分に乏しい吸入液中であっても増殖できるのです。したがって、超音波ネブライザーの消毒は24時間ごとに行う必要があります。

図3. 保存剤非含有の吸入液中でのセラチア菌の動態
尾家重治: 医薬品の微生物汚染とその対策 第7回 吸入液. 月刊薬事, 58: 3367-3371 2016【IC25051】

誤った消毒法

消毒対象物が浮いた状態での“消毒”は望ましくありません(図4)。消毒対象物が消毒液に浸るよう、落としフタを用いる必要があります。また、塩素ガスへの曝露防止のためのフタも必要です。

図4. 消毒対象物が浮いた状態での“消毒”

ジェットネブライザーの消毒方法

ジェットネブライザーの消毒には熱水が適しています。65℃・5分間や70℃・1分間などの熱水に浸漬して、その後に食器乾燥器で乾燥させておきます7)

ここで、熱水浸漬の代わりにウォッシャーディスインフェクタや家庭用食器洗浄機を利用する方法も有用です。また、金属部分がないジェットネブライザーに対しては、0.02%(200ppm)次亜塩素酸ナトリウムへの1時間浸漬法も適しています。

なお、ジェットネブライザーの消毒も、24時間ごとに行う必要があります。

図5. ジェットネブライザー

嘴管の消毒方法

ネブライザーの嘴管の消毒は、0.02%(200ppm)次亜塩素酸ナトリウムへの1時間浸漬により行い(図7)、消毒後には食器乾燥器などで乾燥させておきます。また、代替消毒法として、70℃・1分間などの熱水浸漬もあげられます。

なお、次亜塩素酸ナトリウムによる消毒では、本薬に含まれる食塩によりジェット部分の目詰まりが生じることがあります。この際には、超音波洗浄(37kHz・10分間など)により目詰まりを除去します。

図6. ネブライザーの嘴管
図7. ネブライザーの嘴管の消毒
0.02%(200ppm)次亜塩素酸ナトリウムへの1時間浸漬で行う。

参考資料

  • 1) Reboli AC, et al: An outbreak of Burkholderia cepacia lower respiratory tract infection associated with contaminated albuterol nebulization solution. Infect Control Hosp Epidemiol, 17: 741-743, 1996
  • 2) Botman MJ, et al: Contamination of small-volume medication nebulizers and its association with oropharyngeal colonization. J Hosp Infect, 10: 204-208, 1987
  • 3) Oie S, et al: Microbial contamination of nebulization solution and its measures. Biol Pharm Bull, 29: 503-507, 2006
  • 4) Tablan OC, et al: Guideline for prevention of nosocomial pneumonia. Part I. Issues on prevention of nosocomial pneumonia-1994. Am J Infect Control, 22: 247-292, 1994
  • 5) O`Malley CA: Device cleaning and infection control in aerosol therapy. Respir Care, 60: 917-927, 2015
  • 6) Ida Y, et al: Efficient management and maintenance of ultrasonic nebulizers to prevent microbial contamination. World J Methodol, 26: 126-132, 2016
  • 7) 足立タツ子,他: ジェット式ネブライザーの微生物汚染とその消毒法. Chemotherapy, 41: 195-199, 1993
  • 8) Castel O, et al: Evaluation of closed sterile prefilled humidification. J Hosp Infect, 17: 53-59, 1991