消毒NAVI「日常手指 」
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現場でお困りの消毒方法について、尾家 重治先生(山陽小野田市立 山口東京理科大学 薬学部 教授)に解説していただきました。
なお、器具・物品や消毒剤等の取り扱いにつきましては、各製品の取扱説明書等をご確認ください。
⽇常⼿指の消毒⽅法
日常の手指衛生は、一時的に付着した微生物(一過性菌)の除去・殺滅を目的として行う。流水と石けんによる方法や、アルコール性手指消毒薬を用いる方法などがあげられる。とくに、目に見える汚れが付着していない場合には、アルコール性手指消毒薬による手指衛生が推奨されている。
(1)流水と石けん
流水と石けんによる手洗いでは、大部分の一過性菌を除去できる。したがって、汚れが付着している、排便後、およびディフィシル菌汚染の可能性がある場合などでは、流水と石けんによる手洗いが勧められる1-3)。ただし、流水と石けんによる過度の手洗いは、手荒れを招く。とくに、温水を用いた場合や冬季などでは手荒れを招きやすい。
なお、手洗い後の水分の乾燥にはペーパータオルがもっとも適している。良質のペーパータオルを用いたい。一方、温風式手指乾燥機では乾燥に約40秒を要し、かつ頻回使用で皮膚の乾燥化を招く欠点がある4,5)。さらに、温風式手指乾燥機では、同時に2名以上が使うことができない。
(2)アルコール性手指消毒薬
目に見える汚れが付着していない手指の消毒に適している。優れた消毒効果が得られる1,6,7)。
抗菌スペクトル
アルコール性手指消毒薬は消毒用エタノールを含有するので、幅広い抗菌スペクトル(範囲)を示す(図)。すなわち、MRSAや腸管出血性大腸菌などの一般細菌のみならず、B型肝炎ウイルスやノロウイルスなどのウイルスにも有効である8-13)。ただし、ディフィシル菌などが産生する芽胞には無効である。
なお、ノロウイルスやアデノウイルスに対して効力が増強したアルコール性手指消毒薬が発売されている13)。
特徴
アルコール性手指消毒薬は洗浄剤非含有で、かつグリセリンなどの保湿剤を含有している。このため、アルコール性手指消毒薬は石けんと流水による手洗いに比べて、頻回使用による手荒れが生じにくい利点がある。
ただし、消毒用エタノールには基本的に脱脂作用があるので、アルコール性手指消毒薬の高度の頻回使用では手荒れが生じやすくなる。また、消毒用エタノールが刺激性を示すので、創傷や湿疹などの皮膚トラブルがある手指へのアルコール性手指消毒薬の使用は控えたい。
なお、アルコール性手指消毒薬の代替として、ベンザルコニウム塩化物(0.2w/v%)を主成分とするノンアルコールの泡タイプの手指消毒薬が販売されている。
製品の種類
表に、アルコール性手指消毒薬、およびノンアルコール製剤の成分別一覧表を示した。アルコール性手指消毒薬には消毒用エタノールのみ、クロルヘキシジングルコン酸塩含有の消毒用エタノール、ベンザルコニウム塩化物含有の消毒用エタノール、およびポビドンヨード含有の消毒用エタノールなどの製品がある。
主成分 | 剤形 | 使用上の留意点 | |
---|---|---|---|
アルコール製剤 | 消毒用エタノール | 液 |
① 創や手荒れがある手指には用いない (刺激性がある) ② 引火性に注意! |
ゲル | |||
泡 | |||
消毒用エタノール(pHを酸性化)* | 液 | ||
ゲル | |||
0.2%クロルヘキシジン含有の 消毒用エタノール液 |
|||
液 | |||
ゲル | |||
泡 | |||
0.2%ベンザルコニウム塩化物含有の 消毒用エタノール液 |
液 | ||
0.5%ポビドンヨード含有の 消毒用エタノール |
液 | ||
ノンアルコール製剤 | 0.2%ベンザルコニウム塩化物 | 泡 |
*ノロウイルスなどに対して効力を高めたアルコール製剤
引用文献
- 1) WHO guidelines on hand hygiene in health care: First global patient safety challenge clean care is safer care. World Health Organization; 2009.
- 2) Halm M, Sandau K: Skin impact of alcohol-based hand rubs vs handwashing. Am J Crit Care, 27: 334-337, 2018.
- 3) Centers for Disease Control: Updated norovirus outbreak management and disease prevention guidelines. MMWR, 60: 1-15, 2011. http://www.cdc.gov/mmwr/pdf/rr/rr6003.pdf
- 4) Campbell C: Could do better. Nurs Times, 84: 66-70, 1988.
- 5) Blackmore M: Hand-drying methods. Nurs Times, 83: 71-74, 1987.
- 6) Loffler H, Kampf G: Hand disinfection: how irritant are alcohols? J Hosp Infect, Suppl 1: 44-48, 2008.
- 7) Tasar R, et al: How irritant are n-propanol and isopropanol? - A systematic review. Contact Dermatitis, 84: 1-14, 2021.
- 8) Oie S, et al: Efficacy of disinfectants against biofilm cells of methicillin-resistant Staphylococcus aureus. Microbios, 85: 223-230, 1996.
- 9) Oie S, et al: Efficacy of disinfectants and heat against Escherichia colis O157:H7. Microbios, 98: 7-14, 1999.
- 10) Rutala WA, et al: Inactivation of Mycobacterium tuberculosis and Mycobacterium bovis by 14 hospital disinfectants. Am J Med, 91(suppl.3B): 267S-271S, 1991.
- 11) Griffiths PA, et al: Mycobactericidal activity of selected disinfectants using a quantitative suspension test. J Hosp Infect, 41: 111-121, 1999.
- 12) van Engelenburg FA, et al: The virucidal spectrum of a high concentration alcohol mixture. J Hosp Infect, 51: 121-125, 2002.
- 13) 奥西淳二, 他: 新規アルコール手指消毒薬MR06B7の有効性評価. 薬学雑誌, 130: 747-754, 2010.【IC18996】