消毒NAVI「注射剤のアンプル、バイアル」
医療関係者向情報サイト 医療ナレッジ 消毒NAVI 注射剤のアンプル、バイアル
現場でお困りの消毒方法について、尾家 重治先生(山陽小野田市立 山口東京理科大学 薬学部 教授)に解説していただきました。
なお、器具・物品や消毒剤等の取り扱いにつきましては、各製品の取扱説明書等をご確認ください。
注射剤のアンプル、バイアルの消毒方法
注射剤のアンプル・バイアルの第一選択消毒薬は、消毒用エタノールや70%イソプロパノールなどのアルコールです。アルコールは速効性かつ速乾性だからです。また、チリ・ホコリなどの混入による少量の芽胞汚染を除いて、アルコールが微生物汚染を受ける可能性はないからです。
なお、注射針刺入箇所(ゴム栓の表面)の消毒に、ベンザルコニウム塩化物やクロルヘキシジンなどの低水準消毒薬を含浸した綿(ガーゼ)を用いてはなりません。低水準消毒薬の含浸綿(ガーゼ)は、セラチア菌(Serratia marcescens)や緑膿菌などのグラム陰性桿菌により汚染を受ける可能性があるからです(図1)1-6)。
輸液の注射針刺入箇所(ゴム栓の表面)の消毒は必要?
市販の輸液(先発メーカーの製品)の注射針刺入箇所の微生物汚染について調べたところ、いずれの製品も無菌でした。しかし、「注射針刺入箇所が無菌でなければならない」との規定はありません。したがって今後、刺入箇所が細菌汚染を受けている後発製品が発売されることもあると推定されます。
また、混注時に手指接触により注射針刺入箇所に細菌が付着して、その細菌が注射針の刺入とともに輸液中に混入して増殖するといったパターンはまれではありません7)。したがって、刺入箇所をアルコール消毒する習慣を身に付けておくことは大切です(図2)。
さらに、製造段階で輸液の注射針刺入箇所にBurkholderia epacia(セパシア菌)汚染の水滴が付着したことが原因で、7名に敗血症が生じた事例がフランスで報告されています8)。
以上より、輸液製剤へ注射針を刺入する際に、刺入箇所を前もってアルコールで消毒しておくことは有用と考えられます。
参考資料
- 1) Nakashima AK, et al: Epidemic septic arthritis caused by Serratia marcescens and associated with a benzalkonium chloride antiseptic. J Clin Microbiol, 25: 1014-1018, 1987【IC08709】
- 2) Olson RK, et al: Cluster of postinjection abscesses related to corticosteroid injections and use of benzalkonium chloride. West J Med, 170: 143-147, 1999
- 3) Oie S, et al: Microbial contamination of antiseptics and disinfectants. Am J Infect Control, 24: 389-395, 1996【IC08408】
- 4) Oie S, et al: Microbial contamination of antiseptic-soaked cotton balls. Biol Pharm Bull, 20: 667-669, 1997【IC07944】
- 5) Oie S, et al: Bacterial contamination of commercially available ethacridine lactate (acrinol) products. J Hosp Infect, 34: 51-58, 1996
- 6) 大槙昌文,他: 0.025%塩化ベンザルコニウム綿の微生物汚染とその対策.環境感染, 19: 491-493, 2004【IC15359】
- 7) Holmes CJ, Allwood MC: The microbial contamination of intravenous infusions during clinical use. J Appl Bacteriol, 46: 247-267, 1979
- 8) Doit C, et al: Outbreak of Burkhokderia cepacia bacteremia in a pediatric hospital due to contamination of lipid emulsion stoppers. J Clin Microbiol, 42: 2227-2230, 2004