丸石製薬株式会社

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感染対策 手指衛生ベストプラクティス

慶應義塾大学病院 感染制御部 
感染症看護専門看護師

  • 高野 八百子
  • 増谷 瞳
手指衛生イラスト
看護師イラスト

手指衛生ベストプラクティスとは

手指衛生は、感染の連鎖を断ち切るためのもっとも重要かつ基本的な対策です。その効果を最大限に発揮するには、適切な方法とタイミングで実践する必要があります。とくに手指衛生を実施するタイミングは、WHO(世界保健機関)が提唱する「5つの瞬間」が世界的な標準となっています1)

手指衛生ベストプラクティスとは

多忙な業務のなかで、この「5つの瞬間」をつねに意識し、完璧に実践することは容易ではありません。 そこで当院では、日常業務の流れに沿って「いつ、どこで」手指衛生が必要かを具体的に落とし込み、誰でも一目で確認できるチェックリスト形式の資料として「手指衛生ベストプラクティス」を独自に作成しました。

手指衛生ベストプラクティスを作成する目的

私たちが作成した手指衛生ベストプラクティスは単なる「手順書」ではなく、エビデンスに基づいたもっとも効果的な手指衛生のタイミングを誰もが理解し、実践することを目的としています。大切なのは、個人の意識に頼るのではなく、チームの共通認識として定着させることです。
たとえば、透析センターにおける透析開始時の穿刺業務は医師・看護師・臨床工学技士といった多職種が関わります。互いの業務と手指衛生のタイミングを理解していれば、動きを見ながら「先生、ここで手指衛生をお願いします」と適切なタイミングで声をかけあうことができます。このように、手指衛生ベストプラクティスの作成は手指衛生遵守率の向上だけではなく、相互理解を深めることにつながります。

手指衛生ベストプラクティス作成方法

手指衛生ベストプラクティスを作成するための4STEPをお示しします。

手指衛生ベストプラクティス作成方法
STEP 1
手指衛生ベストプラクティスを作成する業務に関する自施設のマニュアル・手順書があるか確認
まずは、現在の業務が手順書に基づいて統一された手順で行われているかを確認します。手順書がない場合には関連部署と協働し、手順書を作成します。業務手順の統一化は安全性、効率化の観点からも肝要です。手順書を作成することにより、統一した業務手順を示すことができます。
STEP 2
手順書に手指衛生のタイミングが示されているか確認
マニュアルや手順書内に、手指衛生のタイミングが示されていないことはよくあります。「書いていないから手指衛生をしなかった」ということがないよう、あらかじめ示しておくことが必要です。その際には、現場と適切な手指衛生のタイミングについて話し合い、実現可能な手順であるかをすり合わせておきます。手順書の中に手指衛生を入れるだけでも現場への教育効果が期待できます。
STEP 3
示された手指衛生のタイミングが適切であるか見直す
過去に作成したマニュアルや手順書は、手指衛生が示されていたとしても「5つの瞬間」に基づいていないことがあります。また、「患者ゾーンと医療エリア」1)の考え方も重要です。どこまでを患者ゾーンと捉えるかによっても手指衛生のタイミングが異なりますので、もし院内で共通認識がない場合は、この機会に示しておくと理解が深まります。これらを見直すことで、正しい手指衛生のタイミングを現場が共通認識することにつながります。
STEP 4
手順書をもとに「手指衛生ベストプラクティス」を作成
手順書のなかに示された手指衛生のタイミングを抜き出し、ベストプラクティスを作成します。
もしベストプラクティスの作成に至らなかったとしても、それぞれの段階によって手指衛生に対する良い効果を得ることができます。日常的に実施する頻度が高い業務など、気になるところから始めていただくことをおすすめします。

手指衛生ベストプラクティス活用方法

現場における手指衛生ベストプラクティス活用方法は主に3点です。

1点目は教育資材としての活用です。
業務のなかで行うべき手指衛生のタイミングが示されているため、新人・異動者教育やOJTで使用することができます。実際の業務をイメージしながら自己学習にも使用できます。
2点目は客観的な評価の指標としての活用です。
当院で作成した手指衛生ベストプラクティスは、チェックリスト形式になっており、他者の手指衛生を評価する際に使用することができます。部署内で手指衛生を観察する際に用いることで評価のばらつきをなくし、適切なフィードバックをお互いに実施することができます。これにより、手指衛生の直接観察に関する専門的な訓練を受けていない現場スタッフが観察を行う場合でも、評価の精度を担保しやすくなります。
3点目はチームでの改善活動ツールとしての活用です。
遵守率の低いタイミングが特定された場合、それをもとに「なぜ実践が難しいのか」をディスカッションするためのツールとなります。たとえば、「患者のケアをする直前の手指衛生ができていない」という具体的な課題が明らかになった場合、「ベッドサイドに手指消毒剤を配置しよう」という具体的な改善策を立案することができます。

手指衛生ベストプラクティスを「教育」「評価」「改善」のサイクルで活用し続けることが、手指衛生を個人のスキルから、チーム全体で取り組むべき共通の課題として捉えていくことにつながります。

手指衛生ベストプラクティス3例

こちらは、あくまでも当院の業務手順に則って作成した手指衛生ベストプラクティスです。貴施設の状況に合わせて作成いただくことをお勧めします。