丸石製薬株式会社

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医療関係者向情報サイト 医療ナレッジ 感染症情報 手足口病

概要SUMMARY

「手足口病」は手や足、口の中に水疱ができる急性のウイルス性の感染症で、幼い子どもを中心に、主に夏に流行します。いわゆる夏風邪の一種です。
手足口病は感染症法5類感染症で定点把握疾患に定められており、全国約3,000カ所の小児科定点より毎週報告されます。

手足口病の報告数は年によって大きく異なります。
2017年の小児科定点からの報告数は、第15週以降過去5年間と比べて多く、2017年第31週(7/31~8/6)の報告数は昨年同期と比べて約12.6倍です。

1. 微生物

病原体は主にコクサッキーウイルスA6型(CA6)、A16型(CA16)、エンテロウイルス71型(EV71)などのエンテロウイルスです。

エンテロウイルスはピコルナウイルス科に属するエンベロープを持たない一本鎖RNAウイルスです1)。患者から検出されるウイルスは年によって異なり、2017年はCA6が最も多く60%以上を占めています。

2. 感染症

症状

潜伏期間は3~5日で、口腔粘膜、手掌、足の裏や足の甲に2~3mmの水疱性発疹が現れます。
全体の約1/3に発熱がありますが、通常あまり高くならず、高熱が続くことはないとされています。

通常は水疱の跡は痂皮にならず、3~7日で軽快しますが、まれに髄膜炎、小脳失調症、脳炎のような中枢神経系合併症など、
さまざまな症状をおこし重症化することがあります。
特にEV71に感染した場合には、他のウイルスによる手足口病より、中枢神経系の合併症を引き起こす割合が高いとされています。

今年流行しているCA6による手足口病は水疱が大きく、大腿部から殿部などにもでき、発熱も39℃を上回ることも珍しくありません。
また、症状が消失してから、1か月以内に、一時的に手足の爪の脱落を伴う症例も報告されていますが、自然に治るとされています。

治療等

手足口病に有効な抗ウイルス薬はなく、特別な治療法はありません。
一般的には経過観察と対症療法が行われます。水分補給が大切で、刺激の少ないもので栄養を摂ることが勧められています。

しかし、まれに髄膜炎や脳炎など中枢神経系の合併症などが起こる場合があるため、
経過観察をしっかりと行い、元気がない、頭痛、嘔吐、高熱、2日以上続く発熱などの場合は医療機関を受診します。

3. 感染経路

感染経路は、主に咳やくしゃみによる飛沫感染ですが、水疱内容物、オムツ交換などによる便、物品や環境表面から手指を介する接触感染も知られています。
便中へのウイルスの排泄は長期間にわたり、症状が消失した患者も2~4週間にわたり感染源になる可能性があります。

特に、乳幼児が集団生活をしている保育施設や幼稚園などでは、感染が広がる可能性があるため注意が必要です。

4. 消毒剤感受性

原因ウイルスの消毒剤感受性データは少ないですが、下記に紹介します。

報告例1 : 次亜塩素酸ナトリウムのウイルス不活化効果(In vitro2)
ウイルス Soil load 接触時間 最終薬剤濃度 pH 対数減少値
ウイルス : CA16及びEV71 Soil load : 5% 接触時間 : 5分 最終薬剤濃度 : 3,120ppm pH : 9.68 対数減少値 : ≧ 4.0 log10
(99.99%以上不活化)
報告例2 : エタノール、イソプロパノールのウイルス不活化効果(In vitro3)(20℃)
消毒剤 ウイルス
Coxsackievirus A-16 Enterovirus 71
消毒剤 : エタノール Coxsackievirus A-16 :
  • 70% 5分不可
  • 80% 5分不可
  • 90% 5分
Enterovirus 71 :
  • 70% 5分不可
  • 80% 1分
  • 90% 30秒
消毒剤 : イソプロパノール Coxsackievirus A-16 :
  • 50% 60分不可
  • 70% 60分不可
  • 90% 60分不可
Enterovirus 71 :
  • 50% 60分不可
  • 70% 60分不可
  • 90% 60分不可
報告例3 : ウエルセプト®Enterovirus 71不活化効果(In vitro4)
  • 15秒:1.75 log10(約98.2%不活化)
  • 30秒: 2.0 log10(99.0%不活化)

感染対策INFECTION CONTROL

感染防止対策

有効なワクチンはありません。
予防策としては、手洗いの励行と排泄物や水疱の適正な処理が基本になります。

特におむつを交換する時には、排泄物を適切に処理し、しっかりと手洗いをしてください。
乳幼児施設においては、手拭きタオルや遊具(おもちゃ等)を個人別にし、共用しないなどが感染予防対策となります。

手足口病の感染防止対策例

手指 石けんを用いた十分な手洗いが対策の中心になります。手洗いは流水と石けんで十分に行ってください。また、タオルの共用は控えてください。
エタノールのデータが少ないため、確実な効果は期待できませんが、手洗い後、アルコール手指消毒剤を使用することにより追加効果が期待できます。
症状が消失後も2~4週間便などからウイルスが排泄され、また、症状がないままウイルスを排泄している場合がありますので、
日常から手洗いをする習慣をつけましょう。
おむつ交換 手足口病に限ったものではありませんが「2012年改訂版 保育所における感染症対策ガイドライン」5)の衛生管理の項には次の記載があります。
  • 糞便処理の手順の徹底
  • 交換場所の特定(手洗い場がある場所を設定し、食事の場等との交差を避ける)
  • 交換後の手洗いの徹底
  • 使用後のおむつの衛生管理(蓋つきの容器に保管)及び保管場所の消毒

関連リンク

〈厚生労働省ホームページより〉
〈国立感染症研究所ホームページより〉

参考資料

2024年1月