感染症情報「腸管出血性大腸菌感染症」
医療関係者向情報サイト 医療ナレッジ 感染症情報 腸管出血性大腸菌感染症
概要SUMMARY
腸管出血性大腸菌感染症は、ベロ毒素を産生する腸管出血性大腸菌による感染症で、激しい腹痛を伴った頻回の水様性の下痢、血便を特徴とします。
さらに、小児や高齢者では、溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症などの重篤な合併症を発症することがあり、注意が必要です。
感染症法3類感染症で、全数把握対象に定められ、診断した医師はただちに届出の義務があります。
腸管出血性大腸菌による食中毒は、夏に増加する傾向があり、焼肉店などの飲食店などから、食肉の加熱不足による事例が散発的に発生しています。
また、感染力が強く、二次感染が多いのも特徴です。
1. 微生物
感染対策INFECTION CONTROL
感染防止対策
少量の菌数で感染が成立するため、乳幼児や高齢者が集団生活を行う場合や家庭内では注意が必要です。
感染経路は、汚染食品を介した経路と感染者からの二次感染に大別されます。
食品を介した感染を防ぐには、汚染された食品は、中心部温度が75℃以上・1分間以上の加熱が効果的です。
また、調理器具の熱湯消毒・塩素消毒、手洗いや手袋の使用などが重要です。
医療施設内での感染対策は、標準予防策に加え接触予防策を行います。
腸管出血性大腸菌の感染防止対策例
手指 | 接触予防策として、患者処置時にディスポーザブルの手袋を使用することが必要です。 処置後は他の患者や周囲の環境を汚染しないよう、適切に交換することが必要です。 手袋を外した後は、石けんを用いた十分な手洗いや、アルコール手指消毒剤が有効です。 流水を使用した手洗い後の手拭きには、ペーパータオルを使用します。 |
---|---|
排泄物 |
紙オムツやポータブルトイレ用の汚物処理バッグは、感染性廃棄物として適切に処理します。 ポータブルトイレなどの排泄物を消毒する場合は、0.1~1%次亜塩素酸ナトリウムを注ぎ、5分間放置してから流します。 |
ベッドパン (便器) |
ベッドパンウォッシャーを使用、または洗浄後、0.1%ベンザルコニウム塩化物、0.1%両性界面活性剤あるいは0.05%次亜塩素酸ナトリウムへ30分間浸漬します。 |
洋式トイレ便座・ 水道ノブ・ ドアノブなど |
患者が使用したトイレは、水洗のレバーやドアノブ、洗面台など患者が触れた可能性のある場所は消毒用エタノールなどで清拭します。二次感染を防ぐために、排便のたびに実施します。 |
リネン類 | シーツ、タオルなどのリネン類の消毒は、80℃・10分間の熱水洗濯、あるいは洗浄後、0.02~0.05%次亜塩素酸ナトリウムで、30分間浸漬します。 |
環境 |
患者の排泄物で汚染されている可能性がある箇所を消毒します。 床 : 0.2%ベンザルコニウム塩化物や0.2%両性界面活性剤で清拭します。 床頭台、オーバーテーブル、洗面台など : 0.2%ベンザルコニウム塩化物や0.2%両性界面活性剤、消毒用エタノールなどで清拭します。 患者の便で汚染された場合 : 0.1~1%次亜塩素酸ナトリウムで清拭します。 |
関連リンク
- 〈国立感染症研究所 感染症情報センター ホームページより〉
- 〈厚生労働省 ホームページより〉
-
- 「腸管出血性大腸菌O157等による食中毒」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/daichoukin.html
- 「腸管出血性大腸菌Q&A」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000177609.html
- 「一次、二次医療機関のための 腸管出血性大腸菌(O157等)感染症治療の手引き(改訂版)」 https://www.mhlw.go.jp/www1/o-157/manual.html
参考資料
-
1) CDC:Public Health Image Library (PHIL)
https://phil.cdc.gov/PHIL_Images/8797/8797_lores.jpg
- 2) S Oie et al.: Microbios 98 (389), 1999.7-14.
- 3) Ahmed NM et al.: JOURNAL OF FOOD SCIENCE (US) 60(3),1995,606-10.
- 4) 小林寛伊編:新版 増補版 消毒と滅菌のガイドライン 第3版.へるす出版,2015,74-5.