丸石製薬株式会社

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現場でお困りの消毒方法について、尾家 重治先生(山陽小野田市立 山口東京理科大学 薬学部 教授)に解説していただきました。
なお、器具・物品や消毒剤等の取り扱いにつきましては、各製品の取扱説明書等をご確認ください。

手術部位の消毒方法

手術野(皮膚)

手術野(皮膚)には、人体に適用可能で、かつ強力な効果を示す消毒薬を選択する。10%ポビドンヨード、エタノール含有10%ポビドンヨード、1.5%オラネキシジングルコン酸塩、0.5%クロルヘキシジンアルコールなどを用いる(表1)1-7)
なお、使用予定の消毒薬に患者がアレルギーを示さないことを前もって確かめておくことが大切である。また、エタノール含有10%ポビドンヨードや0.5%クロルヘキシジンアルコールなどのアルコール製剤では、引火性に注意する(手術直前での使用を避ける)。0.5%クロルヘキシジンアルコール(エタノール)やエタノール含有10%ポビドンヨードでの手術野消毒後に電気メスを使用したところ、患者が熱傷を負った事例が少なくない8-10)。さらに、ポビドンヨードやクロルヘキシジンによる化学熱傷に対しても注意を払いたい。これらの消毒薬での手術野消毒で、患者と手術台の間にたまるほど大量に用いて、湿潤状態で皮膚へ長時間にわたって接触すると化学熱傷が生じる11.12)。適用後の乾燥を確認することや、患者と手術台の間に吸水シーツ(紙おむつ)を敷くなどの対策が必要である。

表1.手術野(皮膚)に用いる消毒薬
消毒薬 備考
10%ポビドンヨード 首から上の皮膚消毒にはポビドンヨードを用いる
エタノール含有10%ポビドンヨード 首から上の皮膚消毒に、エタノール含有ポビドンヨードおよび0.5%クロルヘキシジンアルコールを用いてはならない。誤って眼や耳に飛入した場合、毒性を示す
0.5%クロルヘキシジンアルコール
1.5%オラネキシジングルコン酸塩 オラネキシジングルコン酸塩は、脳、脊髄、眼、耳(内耳、中耳、外耳)に使用しない

手術野(粘膜)

手術野(粘膜)には、10%ポビドンヨード、0.01~0.025%ベンザルコニウム塩化物やベンゼトニウム塩化物、0.01~0.05%両性界面活性剤及び0.005~0.01%次亜塩素酸ナトリウムなどが用いられる(表2)。これらのうち、特に10%ポビドンヨードが汎用されている。なお、次亜塩素酸ナトリウムは血液凝固遅延作用を示すので、粘膜の創傷部位への使用は避ける。

表2.手術野(粘膜)に用いる消毒薬
消毒薬 備考
10%ポビドンヨード 誤って高濃度のベンザルコニウム塩化物やベンゼトニウム塩化物などを用いると化学熱傷が生じる
0.01~0.025%ベンザルコニウム塩化物
0.01~0.025%ベンゼトニウム塩化物
0.01~0.05%両性界面活性剤
0.005~0.01%次亜塩素酸ナトリウム

引用文献

  • 1) Wade RG, et al. The comparative efficacy of chlorhexidine gluconate and povidone-iodine antiseptics for the prevention of infection in clean surgery: A systematic review and network meta-analysis. Ann Surg. 274: e481-e488, 2021.
  • 2) Shi L, et al. Does povidone-iodine application in surgical procedures help in the prevention of surgical site infections? An updated meta-analysis. Wideochir Inne Tech Maloinwazyjne. 17: 261-278, 2022.
  • 3) Döefel D, et al. Comparison of the antimicrobial efficacy of povidone-iodine-alcohol versus chlorhexidine-alcohol for surgical skin preparation on the aerobic and anaerobic skin flora of the shoulder region. Antimicrob Resist Infect Control. 10: 17, 2021.
  • 4) Jolivet S, Lucet JC. Surgical field and skin preparation. Orthop Traumatol Surg Res. 105: S1-S6, 2019.
  • 5) WHO surgical site infection prevention guidelines. p87 https://www.who.int/publications/i/item/global-guidelines-for-the-prevention-of-surgical-site-infection-2nd-ed
  • 6) Evidence review for the effectiveness of skin antiseptics in the prevention of surgical site infection: Surgical site infections: prevention and treatment. Evidence review B, National Institute for Health and Care Excellence (NICE). NICE guideline NG125. April 2019.
  • 7) Jalazadeh H, et al. Efficacy of different preoperative skin antiseptics on the incidence of surgical site infections: a systematic review, GRADE assessment, and network meta-analysis. Lancet Microbe. 3: e762-e771, 2022.
  • 8) 木村 哲,他. 電気メスの火花がアルコール含有消毒剤及びスポンジ枕に引火し熱傷を生じた事例. 手術医学. 16: 222-223, 1995.
  • 9) Wills J, et al. Burns with Hibitane Tincture. FDA Drug Bll. 15: 9, April 1985
  • 10) Tooher R, et al. Surgical fires and alcohol-based shin preparations. ANZ J Surg. 74: 382-385, 2004.
  • 11) 中野 園子, 他. ポビドンヨードによる化学熱傷. 麻酔. 40 : 812-815, 1997. 【IC08800】
  • 12) 大橋 光江, 他. 手術部位における背部紅斑に関する研究 ―イソジン消毒による影響―. オペナーシング. 13:618-624, 1998.
  • 13) 薬生安発0620第1号, 平成28年6月20日, 厚生労働省医薬・生活衛生局安全対策課長. クロルヘキシジングルコン酸塩を含有する医療機器にかかる「使用上の注意」について.