丸石製薬株式会社

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現場でお困りの消毒方法について、尾家 重治先生(山陽小野田市立 山口東京理科大学 薬学部 教授)に解説していただきました。
なお、器具・物品や消毒剤等の取り扱いにつきましては、各製品の取扱説明書等をご確認ください。

浴槽の消毒方法

使用後の浴槽には洗浄剤を用いた洗浄を行う。ただし、皮膚疾患(褥瘡、熱傷など)がある患者の使用後には、洗浄を兼ねた消毒が行える両性界面活性剤の使用が望ましい。たとえば、0.2%両性界面活性剤をしみ込ませたスポンジなどでゴシゴシこすり洗いをするなどである。その後、5分間以上放置してから洗い流す。なぜなら、皮膚疾患がある患者が入浴した場合では、洗浄後であっても浴槽から高頻度かつ高濃度にMRSAが検出されることが少なくないからである1,2)
なお、病院では浴槽を利用するよりシャワー浴で済ませる方がより衛生的である。とくに、術前・術後などの患者には、シャワー浴が勧められる。

浴水(お湯)

医療施設や介護施設での浴槽のお湯は、1人ずつ入れ替えるのが原則であるが、共用するのであれば塩素系消毒剤(ジクロルイソシアヌール酸など)の投入が必要になる。公衆浴場と同様に、医療施設や介護施設でのお風呂の共用では、前もって浴水へ塩素系消毒剤を投入する(図1)。
表には、病院内の共用の浴槽に塩素系消毒剤を投入した場合としない場合での浴水の微生物汚染について示した。本結果より、塩素系消毒剤の投入により浴水が清潔に保たれていることが分かる。投入する塩素系消毒剤の量は使用人数や使用時間によって異なるが、入浴開始前で残留塩素濃度が数ppmとなるように投入する。
なお、24時間風呂(連日使用型循環浴槽)は構造的にレジオネラ菌汚染を受けやすく、塩素管理を怠るとレジオネラ菌の大量増殖を招く3,4)。したがって、24時間風呂の浴水には十分な残留塩素濃度(1ppm前後;専用の装置がある)を保つことが必須である。また、1週間に1回以上の完全換水と清掃・消毒も必要である5)
また、貯湯タンクの水温は60℃以上に保つ必要がある6,7)

図1.患者ごとのお湯の入れ替えができなければ、塩素系消毒剤を投入する
表.使用後の浴水の菌量(個/mL)
病棟*1 消毒剤*2
投入なし 投⼊あり*3
A 225 <5
B 60 <5
C 575 <5
  • *1 それぞれの病棟で7~16名が、約3時間にわたって入浴した。
  • *2 ジクロルイソシアヌール酸ナトリウム
  • *3 残留塩素濃度は投入直後で5~8.1ppm、入浴終了後で0.03~0.96ppmであった。

沐浴槽

洗浄を兼ねた消毒が行える0.05~0.2%の両性界面活性剤などで清拭して(図2)、5分間以上放置してから洗い流す。この際、新生児集中治療室(NICU)などでは、不潔になりやすいスポンジの使用は避けて8,9)、使い捨てのガーゼなどを利用するのが望ましい。

図2.沐浴槽の消毒
両性界面活性剤をしみ込ませたガーゼでゴシゴシこする。

引用文献

  • 1) Oie S, et al: Contamination of environmental surfaces by Staphylococcus aureus in a dermatological ward and its preventive measures. Biol Pharm Bull, 28: 120-123, 2005.
  • 2) Prasanna M, Thomas C: A profile of methicillin resistant Staphylococcus aureus infection in the burn center of the Sultanate of Oman. Burns, 24: 631-636, 1998.
  • 3) 石川章,他:家庭用24時間風呂が感染源と特定されたレジオネラ肺炎の1例.感染症誌,78: 898-904, 2004.
  • 4) Kuroki T, et al: Outbreak of Legionnaire’s disease caused by Legionella pneumophila serogroups 1 and 13. Emarg Infect Dis, 23: 349-351, 2017.
  • 5) 厚生労働省健康局生活衛生課.公衆浴場における衛生管理要領等の改正について.生衛発第1811号,平成12年12月15日.
  • 6) 國重龍太郎,他:当院における院内レジオネラ感染対策部署間連携活動支援システム構築の検討.環境感染誌,30: 14-21, 2015.【IC24041】
  • 7) 厚生労働大臣 坂口力.レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術域の指針.厚生労働省告示第264号,平成15年7月25日.
  • 8) Oie S, Kamiya A: Contamination and survival of Pseudomonas aeruginosa in hospital used sponges. Microbios, 105: 175-181, 2001.
  • 9) Frenkel LM: Pseudomonas folliculitis from sponges promoted as beauty aids. J Clin Microbiol, 31: 2838, 1993.