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腸管出血性大腸菌感染症-概要、感染対策-

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概要

腸管出血性大腸菌の電子顕微鏡写真(CDCホームページより)
腸管出血性大腸菌の電子顕微鏡写真
(CDCホームページより1)

腸管出血性大腸菌感染症は、ベロ毒素を産生する腸管出血性大腸菌による感染症で、激しい腹痛を伴った頻回の水様性の下痢、血便を特徴とします。さらに、小児や高齢者では、溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症などの重篤な合併症を発症することがあり、注意が必要です。
感染症法3類感染症で、全数把握対象に定められ、診断した医師はただちに届出の義務があります。
腸管出血性大腸菌による食中毒は、夏に増加する傾向があり、焼肉店などの飲食店などから、食肉の加熱不足による事例が散発的に発生しています。また、感染力が強く、二次感染が多いのも特徴です。

1.微生物

腸管出血性大腸菌(Enterohemorrhagic Escherichia coli ; EHEC)は、ベロ毒素を産生する大腸菌です。
大腸菌は、腸内細菌科 エシェリヒア属に属する0.4~0.7×1.3~3.0μmのグラム陰性悍菌で、鞭毛を有します。ヒトや動物の消化管内、主に大腸に生息しますが、大腸菌の一部はヒトの腸管に感染し、下痢などを起こします。下痢を起こす大腸菌は現在6種類に分類され、その一つが腸管出血性大腸菌です。さらに腸管以外の尿路感染や髄膜炎を起こす大腸菌があり、総じて病原大腸菌と呼ばれます。
日本では、患者及び保菌者から検出される腸管出血性大腸菌の血清型は、O157がもっとも多く、O26とO111がそれに次ぎます。なお、腸管出血性大腸菌の感染力は強く、50~100個程度の少量の菌数で感染が成立すると言われています。また、強い酸抵抗性を示し、胃酸の中でも生残します。



2.感染症

疾患・症状

潜伏期間は3~5日で、激しい腹痛を伴う頻回の水様便の後、血便が出現します。発熱は軽度で、多くは37℃台です。有症者の約6~7%の症例が、溶血性尿毒症症候群(Hemolytic Uremic Syndrome:HUS)や脳症などの重症な合併症を発症するおそれがあります。HUSを発症した患者の致死率は1~5%とされています。

治療

下痢症は、他の急性下痢症と同様、基本的には対症療法です。水分補給と消化しやすい食事を勧めます。さらに、HUSなどの合併症の発症を注意深く観察する必要があります。
なお、腸管運動抑制性の止瀉剤などはベロ毒素の排泄を抑制するため推奨されません。また、細菌感染症であり、適切な抗菌剤を使用しますが、ST合剤はHUS発生を増加させる報告があり、抗菌剤の推奨は統一されていません。抗菌剤を使用する場合には、できるだけ速やかに以下の抗菌剤の経口投与を行い、ST合剤等は使用しない方がよいとされています。
○抗菌剤の使用は経口投与を原則とする。
小児 : ホスホマイシン、ノルフロキサシン、カナマイシン
成人 : ニューキノロン、ホスホマイシン

溶血性尿毒症症候群(Hemolytic Uremic Syndrome:HUS)
様々な原因によって生じる血栓性微小血管炎(血栓性血小板減少性血管炎)による急性腎不全であり、(1)破砕状赤血球を伴った貧血、(2)血小板減少、(3)腎機能障害を特徴とします。HUSの初期には、顔色不良、乏尿、浮腫、意識障害などの症状が見られます。
HUSおよび脳症は発症すると、死亡あるいは腎機能や神経学的障害などの後遺症を残す可能性のある、重症合併症の一つであり、小児と高齢者に起こりやすいので、この年齢層の人々には特に注意が必要です。



3.感染経路

主に腸管出血性大腸菌に汚染された食品の経口感染と汚染物(糞便、吐潟物など)の接触による二次感染(糞口感染)です。

感染対策

消毒剤・熱感受性

低水準消毒剤で容易に死滅し、すべての消毒剤が有効です。
0.1%ベンザルコニウム塩化物、0.1%クロルヘキシジングルコン酸塩、80vol%エタノールでは15秒で殺菌効果を示します2)。また、熱には弱く、70℃・15秒で死滅し2)、食肉中では60℃・2分で1/104-5に減少します3)

感染防止対策

少量の菌数で感染が成立するため、乳幼児や高齢者が集団生活を行う場合や家庭内では注意が必要です。
感染経路は、汚染食品を介した経路と感染者からの二次感染に大別されます。
食品を介した感染を防ぐには、汚染された食品は、中心部温度が75℃以上・1分間以上の加熱が効果的です。また、調理器具の熱湯消毒・塩素消毒、手洗いや手袋の使用などが重要です。
医療施設内での感染対策は、標準予防策に加え接触予防策を行います。

表.腸管出血性大腸菌の感染防止対策例

手指 接触予防策として、患者処置時にディスポーザブルの手袋を使用することが必要です。処置後は他の患者や周囲の環境を汚染しないよう、適切に交換することが必要です。手袋を外した後は、石けんを用いた十分な手洗いや、アルコール手指消毒剤が有効です。流水を使用した手洗い後の手拭きには、ペーパータオルを使用します。
排泄物 紙オムツやポータブルトイレ用の汚物処理バッグは、感染性廃棄物として適切に処理します。
ポータブルトイレなどの排泄物を消毒する場合は、0.1~1%次亜塩素酸ナトリウムを注ぎ、5分間放置してから流します。
ベッドパン
(便器)
ベッドパンウォッシャーを使用、または洗浄後、0.1%ベンザルコニウム塩化物、0.1%両性界面活性剤あるいは0.05%次亜塩素酸ナトリウムへ30分間浸漬します。
洋式トイレ便座・
水道ノブ・
ドアノブなど
患者が使用したトイレは、水洗のレバーやドアノブ、洗面台など患者が触れた可能性のある場所は消毒用エタノールなどで清拭します。二次感染を防ぐために、排便のたびに実施します。
リネン類 シーツ、タオルなどのリネン類の消毒は、80℃・10分間の熱水洗濯、あるいは洗浄後、0.02~0.05%次亜塩素酸ナトリウムで、30分間浸漬します。
環境 患者の排泄物で汚染されている可能性がある箇所を消毒します。
床:0.2%ベンザルコニウム塩化物や0.2%両性界面活性剤で清拭します。
床頭台、オーバーテーブル、洗面台など:0.2%ベンザルコニウム塩化物や0.2%両性界面活性剤、消毒用エタノールなどで清拭します。
患者の便で汚染された場合:0.1~1%次亜塩素酸ナトリウムで清拭します。

腸管出血性大腸菌感染症関連リンク

〈国立感染症研究所 感染症情報センター ホームページより〉
「腸管出血性大腸菌感染症とは」
(https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/439-ehec-intro.html)
〈厚生労働省 ホームページより〉
「腸管出血性大腸菌O157等による食中毒」
(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/daichoukin.html)
「腸管出血性大腸菌Q&A」
(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000177609.html)
「一次、二次医療機関のための 腸管出血性大腸菌(O157等)感染症治療の手引き(改訂版)」
(http://www1.mhlw.go.jp/houdou/0908/h0821-1.html#1-4)

参考資料

1)
CDC:Public Health Image Library (PHIL)
 https://phil.cdc.gov/PHIL_Images/8797/8797_lores.jpg
2)
S Oie et al.: Microbios 98 (389), 1999.7-14.
3)
Ahmed NM et al.: JOURNAL OF FOOD SCIENCE (US) 60(3),1995,606-10.
4)
小林寛伊編:新版 増補版 消毒と滅菌のガイドライン 第3版.へるす出版,2015,74-5.

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