丸石製薬株式会社

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医療関係者向情報サイト 医療ナレッジ 感染症情報 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)

概要SUMMARY

2019年12月初旬に中国湖北省武漢市にある海鮮市場関係者に原因不明の肺炎が発生し、2020年1月5日武漢市衛生健康委員会は7人の重症患者を含む合計59人の原因不明の肺炎として報告しました。その後、中国当局はその原因が新型コロナウイルスであることを発表しました。

世界保健機構(WHO)は、新型コロナウイルス感染症の正式名称を「COVID-19(coronavirus disease 2019)」とすることを発表しました。

COVID-19は中国、日本、韓国などのアジア、欧米など世界で拡大を続け、WHOは2020年1月30日に公衆衛生上の緊急事態を宣言し、3月11日にパンデミック(世界的感染の大流行)を宣言しました。4月13日現在、感染者累計は180万人、死亡者は11万人を超え、ほぼ全世界に感染が拡大しました。

日本政府は、早急に感染の拡大を防止するため、感染症法に基づき「指定感染症」、検疫法に基づき「検疫感染症」に指定する政令を公布し、2月1日に施行されました。
さらに、4月7日新型インフルエンザ等特別措置法に基づく緊急事態宣言を発令しました。

1. 微生物1-4)

新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真像4)
出典:国立感染症研究所ホームページ

2020年1月7日、中国当局がCOVID-19の原因として新型コロナウイルスを検出したとWHOが発表しました1)
このウイルスは「SARS-CoV-2」と命名されました2)
SARS-CoV-2は、直径は約60-140 nm、ウイルス粒子にコロナウイルスに特徴的なスパイクを持っています。
SARSコロナウイルスと同じβコロナウイルス属に分類され、その遺伝子配列が、コウモリ由来のSARS様コロナウイルスに近いため、コウモリが起源となった可能性が考えられています3)

豆知識 コロナウイルス5)

コロナウイルスは、脂質二重膜のエンベロープを持つ直径100nmの1本鎖RNAウイルスで、RNAウイルスのなかでは最大サイズです5)。エンベロープの表面に王冠"crown"に似た突起を持ちます。コロナウイルスは、ギリシャ語で王冠の意味の"corona"から名前が付けられています5)
遺伝学的特徴からα、β、γ、δに分類されています。
ヒトに感染するコロナウイルスは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)以外に6種類見つかっています。

日常的にヒトに風邪をおこす4種類のウイルス(Human Coronavirus:HCoV)

風邪の10~15%(流行期35%)は、これら4種のコロナウイルスを原因とし、多くは軽症です5)

動物から感染し重症肺炎を惹き起こす2種類のウイルス
SARSコロナウイルス(SARS-CoV)
2002年中国広東省で発生した重症急性呼吸器症候群の原因コロナウイルスで、コウモリのコロナウイルスがヒトに感染して重症肺炎を惹き起こすようになったと考えられています。
MERSコロナウイルス(MERS-CoV)
2012年サウジアラビアで発見された中東呼吸器症候群の原因コロナウイルスで、ヒトコブラクダの風邪をおこすウイルスがヒトに感染して重症肺炎を惹き起こすようになったと考えられています。

2. 感染症6,7)

潜伏期間は1〜14日(5日間が最も多い)であり、その後、発熱や呼吸器症状、全身倦怠感等の感冒様症状が1週間前後持続します6,7)。下痢、嘔気・嘔吐などの消化器症状がみられることもあります7)。また、症例により発症から1週間程度で重症化してくると考えらます11)

多くの症例は軽症で自然に改善しますが、高齢者や心・血管系疾患、糖尿病、高血圧、慢性呼吸器疾患などの基礎疾患のある人では重症化するリスクが高く予後が悪くなります。小児の症状は比較的軽症です7)

中国における2020年2月20日までの5.5万を超える確定症例についての報告では、軽症から中等症(肺炎がみられないか軽い肺炎)は約80%、重症(呼吸困難、呼吸数の増加、血中酸素濃度の低下など)は13.8%、重篤(呼吸不全、ショック、臓器不全など)は6.1%で、致死率は3.8%です7)。無症候性感染は比較的稀です7)

現在ワクチンや根本的な治療方法は確立していません。そのため、治療は各症状に対する対症療法になります。
解熱剤、鎮咳剤の投与、必要に応じて輸液、酸素療法、人工呼吸器の装着などを行います10)

3. 感染経路8,9)

主に飛沫感染及び接触感染により伝播します8)。空気感染は起きていないと考えられるものの、閉鎖空間において近距離で多くの人と会話する等の一定の環境下であれば、飛沫がなくても感染するリスクがあります9)

4. 消毒剤感受性10,11)

SARS-CoV-2の消毒剤感受性は明確ではありません。しかし、エンベロープを持つウイルスであり、消毒剤への抵抗性は高くなく、アルコール、次亜塩素酸ナトリウム、グルタラール、フタラール、過酢酸などが有効と考えられます。

厚生労働省では手などの皮膚の消毒を行う場合には、消毒用アルコール(70%)を、物の表面の消毒には次亜塩素酸ナトリウム(0.1%)が有効としています10)

感染対策INFECTION CONTROL

感染防止対策

COVID-19の疑いまたは確定患者に対する感染対策は、標準予防策に加えて接触予防策と飛沫予防策を行います11,12)

施設内感染防止対策のポイント9,11,12)

手指衛生

発熱や呼吸器症状のある患者に対応する場合は、手指衛生の徹底が重要です。適切なタイミングで実施します。
コロナウイルスはアルコール消毒(70%)で感染力が失うことが知られ10)、アルコール手指消毒薬は、新型コロナウイルスに有効と考えられます。
手に有機物など目に見える汚染の無い場合はアルコール手指消毒薬を使用し、目に見える汚染のある場合は流水での手洗いを行うことが勧められます。

呼吸器衛生/咳エチケット

次のような点に注意が必要です。

  • 咳やくしゃみをする時には口と鼻を覆い、ティッシュを使用して廃棄する。
  • 飛沫が付着した後は手指衛生を実施する。
  • ノンタッチ式ゴミ箱(フットペダル式、開放式)を用意する。
  • その指示をする告知を掲示する。
  • 待合室等の使用しやすい場所にアルコール手指消毒薬や手洗い用品を配置する。
  • 地域流行時、咳のある患者にマスクをしてもらい、他の人から1m以上離れるよう勧める。
個人防護具 通常は、眼・⿐・⼝を覆う個⼈防護具(アイシールド付きマスク、フェイスガード+マスクなど)、キャップ、ガウン、⼿袋を装着します12)
⼀時的に⼤量のエアロゾルが発⽣しやすい状況においては、上記にN95マスクを追加します11,12)
診察室、患者病室 個室が望ましいです。
感染確定例や疑い例の陰圧室での対応が難しい場合は、通常の個室で管理し室内の換気を適切に⾏います11,12)
環境管理 SARS-CoV-2は環境中に長期間生存する可能性があるため、患者周囲の環境、高頻度接触面などは特に注意が必要です。ナースコール、テーブル、ベッド柵、床頭台などの患者周囲環境はアルコール(消毒用エタノール、70%イソプロピルアルコール)、抗ウイルス作用のある消毒剤含浸クロスで消毒します11)
また、ウイルスが糞便から検出することがあり、トイレが糞便で汚染された場合には、洗浄後0.1%次亜塩素酸ナトリウムで消毒します9,12)
リネン類 リネンは、通常の熱⽔洗浄(80℃、10分間)で問題ありませんので、特別な対応は不要です12)
医療器具 聴診器、体温計、⾎圧計等の器材などは個人専用とし、アルコール(消毒用エタノール、70%イソプロピルアルコール)または抗ウイルス作用のある消毒剤含浸クロスで使用ごとに清拭消毒を⾏います11)

参考資料