毒 性
ヒト-経口 中毒:1〜3g/人
ヒト-経口 LD:8〜17g/人
ヒト-経口 MLD:214mg/kg
ヒト-皮膚 MLD:2,430mg/kg
幼児-皮膚 MLD:1,200mg/kg
子供-皮膚 MLD:4g/kg/4日
イヌ-経口 中毒:0.33〜0.5g/kg
イヌ-経口 MLD:1,780mg/kg
イヌ-皮下 MLD:1,000mg/kg
ウサギ-経口 LD:2〜4g/匹
ウサギ-皮下 LD:0.3〜1g/匹
マウス-皮下 LD50:1,740mg/kg
マウス-静脈 LD50:1,780mg/kg
MLD:最小致死量、LD:致死量、LD50:50%致死量
急性中毒
経口摂取後、特有の臨床像として持続性の嘔吐と下痢(青みがかった緑色の粘液と血液)が始まる。初期の中毒症状として発疹(斑点と皮膚乳頭またはいずれか)が現れ、腹部、生殖器や頭に始まり、急速に広がり、1〜2日後、表皮剥離に続き強度の落屑を起こした。しばしば粘膜にも影響し、とくに幼小児において、口腔、咽頭、結膜に炎症を起こす。
痙攣、頭痛と精神錯乱を伴う中枢神経系症状がみられる。小児ではメニンギスムス、顔面筋や四肢の攣縮が起こり、次に痙攣を呈する。
乏尿、無尿、高ナトリウム血症、高クロール血症、高カリウム血症、タンパク尿、血尿、円柱尿を伴う急性尿細管壊死が起こる。
最後に異常高温、血圧下降、ショックが続く。
慢性中毒
長時間の摂取により、食欲不振、体重減少、嘔吐、中度の下痢、発疹、広範脱毛、痙攣、貧血などが起こる。
乳幼児の慢性中毒症例(2例)では、4カ月半の乳児は1週10gのホウ砂を12週間与えられ、9ヵ月の乳児は1週2gを5週間投与された。その母親らは、乳児に生後1ヵ月のころからホウ砂とハチミツの混合物であるおしゃぶりを使い続けていた。前者の乳児の尿中に7.5mg/100mLのホウ酸が含まれており、血中濃度は9.44mg/100mLであった。髪は乏しく、頭皮は薄く、紅斑があった。生後2ヵ月のとき、2人の乳児に典型的痙攣発作が起こり、脳波は、しばしばburstがみられ、低振幅速波が優位となった。後者の乳児は激しい正常赤血球性貧血と低色素貧血を起こした。そのホウ砂とハチミツの混合物をやめると1週間以内に脳波は正常になった。貧血は3週間内に正常化した。
別な症例として、1973年、32歳のてんかん女性において、中毒性広範脱毛、激しい疲労、精神錯乱の例が報告された。この女性は、てんかんの発作とともに舌の炎症をやわらげるため、1年にわたって毎日多くのうがい薬を用いていた。ホウ酸血中濃度は3.2mg/100mLに上昇した。数週間で正常化した。


致死量
ヒト推定致死量(経口)は成人15〜20g、幼児5〜6g、乳児2〜3gともされている。また乳幼児の致死率は70.2%との報告もある。


中毒症状
経口の場合
消化管より吸収される。嘔気、嘔吐、下痢、腹痛、呼吸困難、ショック、黄疸、無尿(乏尿)、錯乱、痙攣、昏睡、皮膚病変(staphylococcal scalded skin syndromeに類似した全身紅斑など)。


治 療
■経口の場合
1) 集中治療
呼吸・循環の状態により適切な集中治療を行なう。
呼吸管理 気道閉塞、自発呼吸の抑制、換気量の低下、血液ガスの悪化があれば、気管内挿管のうえ、ベンチレータを使用し、適切な人工呼吸(含PEEP療法)、酸素療法を行う。
循環管理 血圧低下がみられる場合には、輸液負荷、ドーパミン(2〜5μg/kg/minより開始)の持続静脈内投与により血圧を維持する。効果がなければエピネフリンまたはノルエピネフリン(0.1μg/kg/minより開始)の持続静脈内投与を行う。ショックの場合には重炭酸ナトリウム [base excess × 体重 × 0.3(mEq/L)]により代謝性アシドーシスを補正する。
2) 催吐
服用直後なら水を飲ませ催吐を試みる。
3) 胃洗浄、活性炭、下剤
胃洗浄 大量の生理食塩水で胃洗浄を行う。服用後短時間内のものに有効である。意識レベルの低下しているものには気管内挿管により気道を確保したうえで行う。意識のある場合は側臥位をとらせ、吸引装置を用意し、肺への誤嚥を防止するようにする。洗浄液の1回注入量は5歳以上150mL、5歳以下50〜100mLとし、反復して胃洗浄を行う。
活性炭(粉末) 成人30〜100g、小児15〜30g(1〜2g/kg)を胃洗浄のあと、生理食塩水またはD-ソルビトールとともに胃管より投与する。
下  剤 硫酸マグネシウムまたは硫酸ナトリウム(成人20〜30g/回、小児250mg/kg/回)、あるいはD-ソルビトール(35%)(成人1〜2g/kg/回、1歳以上の小児1〜1.5g/kg/回)を活性炭が排泄されるまで4〜6時間ごとに投与する。イレウスや腸雑音の聴取しえないものには禁忌であり、幼児には2回/日以上投与しない。下痢による体液喪失に注意する。硫酸マグネシウム過量投与による高マグネシウム血症の報告があるので注意する。
4) 抗痙攣薬
ジアゼパム(成人5〜10mg、小児0.2〜0.4mg/kg)を2〜3分でゆっくり静注。痙攣が反復するなら、フェニトイン(成人125〜250mg、小児3〜5mg/kg、ゆっくり静注)、フェノバルビタール(成人100〜200mg、小児5〜7mg/kg、筋注)を投与する。
5) 強制利尿
腎障害の程度が強くなく、乏尿(無尿)がみられなければ有効と思われる。
6) 血液透析
急性腎不全に陥ったもの、重篤な症状を示すもの、一般的な他の方法で改善がみられないものに血液透析を行う。
〔備考〕
ホウ酸の急性中毒は一般に重篤と考えられているが、“1回のみの経口摂取で重篤な症状を示す例はみられない”という報告もある。この報告では364例のホウ酸中毒例で死亡したのは1例のみで、この例は慢性に反復して服用していた例であったという。生存例でも嘔気、嘔吐、下痢、腹痛が主症状であり、全身的な症状を呈した例はみられなかったとしている。さらに成人で99%のホウ酸297g、幼児で50%ホウ酸20gを服用した例でも症状は消化器症状のみであったと述べている。


使用上の注意
●ホウ酸,ホウ砂
1. 副作用
本剤は使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していない。
  頻度不明
過敏症 発疹、眼瞼炎等
このような症状があらわれた場合には、ただちに使用を中止すること。
2. 適用上の注意
投与経路 眼科用にのみ使用すること。
使用時
長期間にわたり使用しないこと。


参考文献
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